12球団から指名されなかった二刀流選手
10月24日。プロを夢見るアマチュア選手にとって一大イベントとも言えるドラフト会議が行われた。今年は高校生159人、大学生162人の計321人がプロ志望届を提出。全支配下指名選手の内訳は高校生22人、大学生27人、プロ志望届を必要としない社会人13人、独立他7人の計69人。育成は高校生33人、大学生9人、社会人0人、独立他12人の54人と合計123人が狭き門を突破した。
ただ、上位候補の実力がありながら、名前を呼ばれなかった選手がいる。桐朋高(西東京)の森井翔太郎内野手は、9月2日にプロ志望届を提出後、進路をメジャー一本に絞り、マイナー契約を目指すことを決断。NPB12球団へ意思表明の文書を提出し、ドラフト当日に指名されることはなかった。
森井は桐朋学園小時代、武蔵府中リトル、住吉ビクトリーに在籍し、6年時にはライオンズジュニアに選出。桐朋中で練馬北シニアに在籍後、1年夏から同校の軟式野球部でプレー。偏差値71を誇る桐朋高に内部進学し、1年夏から三塁のレギュラーを獲得すると、投手としてマウンドにも上がるなど、投打で非凡な才能を見せていた。
2年秋から遊撃も兼任しながら、3年間で183センチ、88キロと堂々たる体格に成長。通算45本塁打を積み上げ、投げては最速153キロをマークする注目選手となった。
NPB入りは「将来を考えると迷います」
3年夏の西東京大会、都富士森との初戦で敗退し、高校野球生活は幕を閉じたが、公式戦で主だった実績のない二刀流の逸材に、日米14球団のスカウトが集結し、熱視線を送った。
森井は当初、NPB球団入りや米大学への進学を模索していたが、9月上旬に家族で渡米し、現地でメジャーやマイナーの試合を観戦したことで、米球界挑戦の決断に至ったという。
今ドラフトでは、NPB球団から支配下指名されても、態度を保留する選手がいた。ロッテから6位指名を受けた立松由宇内野手(日本生命)は、「昇給が近いというのもあるし、日本生命という会社は、凄いいい施設。プロと場所は違えど、好きな野球は続けられる。将来を考えると迷います」と悩める胸中を語った。
立松は来年2月で26歳。先々の保証が何もないNPBと、給与、施設面、そして引退後の会社員生活も安定している社会人を天秤にかける気持ちも理解できる。
熟考を重ねた末、11月18日にロッテと入団交渉に臨み、契約金4000万円、年俸1000万円(金額は推定)で合意。千葉県松戸市出身で、小さい頃から大好きな球団だったことが入団の決め手となった。
森井のように、NPBを経ずに米球界挑戦もギャンブルだが、メジャーに昇格し、活躍した時の年俸は日本とは桁違いの額になる。いつケガで競技生命が終わるかわからない野球選手にとって、NPBよりも、社会人残留やメジャー挑戦のほうが魅了的に映るケースもあるだろう。