国産魚の不漁、輸入魚の高騰が続き、水産物の安定した仕入れが難しくなっている。その中で回転寿司チェーン最大手のスシローではこの秋、無名の貝を新メニューに採用した。時事通信社水産部の川本大吾部長は「カナダ沖で獲れるアイスランドガイという二枚貝が寿司ネタになった。原産国でも食材として名前を知っている人は少ない。そうした魚種が大手チェーンで寿司ネタになるのは非常に珍しい」という――。
スシローでグランドメニューとして提供されているアイスランドガイの握り寿司
画像提供=F&LC
スシローでグランドメニューとして提供されているアイスランドガイの握り寿司

スシローに登場した海外産の貝の正体

本マグロやイクラ、エビ、カニなど、人気の寿司ネタは数多いが、フード&ライフカンパニーズ(F&LC)が運営する回転寿司チェーン最大手のスシローでは今秋、他店にはない海外産の貝をグランドメニューとして握りのネタに起用。順調な売れ行きで、寿司業界でもちょっとした話題となっている。

この貝とは、カナダ産のアイスランドガイという二枚貝。名前にアイスランドと付いているが、同国沖では商業的な漁獲は行われておらず、「カナダ東部のセーブル島の沖合で、ホッキガイ漁などと合わせて操業が行われている」と、同国漁業に詳しい水産会社グルメグローバル社(東京都中央区築地)のアレックス社長は言う。

アイスランドガイの見た目は、ホンビノスガイや黒ハマグリなどと少し似ており、丸みを帯びて貝の殻は黒っぽい。ホンビノスなどよりも深い「潮下帯」と呼ばれる水域に生息しているため、大型漁船から海底の砂地に圧力をかけて貝を浮かせながら漁獲する。

カナダでは、海底を一掃するように漁獲するトロール(底引き網)漁が、タラなど底魚資源への悪影響を懸念して規制されているため、海洋環境にやさしい漁法が推奨されているようだ。

アイスランドガイ(右)とむき身(左)
画像提供=グルメグローバル社
アイスランドガイ(右)とむき身(左)