11月28日、プロ野球で守備の優れた選手に贈られる「三井ゴールデン・グラブ賞」の表彰式が行われた。ライターの広尾晃さんは「正直、選考結果には首をかしげたくなる選手はいる。日本野球全体で守備に対する勉強不足を感じる」という――。
ゴールデングラブ賞の表彰式に出席したパ・リーグの受賞者。(左から)日本ハム・万波、ソフトバンク・周東、楽天・辰己、西武・源田、ソフトバンク・栗原、楽天・小深田、ソフトバンク・山川、甲斐=2024年11月28日、東京都内のホテル
写真提供=共同通信社
ゴールデングラブ賞の表彰式に出席したパ・リーグの受賞者。(左から)日本ハム・万波、ソフトバンク・周東、楽天・辰己、西武・源田、ソフトバンク・栗原、楽天・小深田、ソフトバンク・山川、甲斐=2024年11月28日、東京都内のホテル

ゴールデン・グラブ賞の選考結果は適切なのか

MVPやベストナインも決まり、今年のNPBの全日程が終了した。筆者は毎年、NPBのアワードについて、チェックしている。毎年「これはどうか?」と思う受賞があるのだが、とりわけ「ゴールデン・グラブ賞(正式名称:三井ゴールデン・グラブ賞)」である。

この賞は、MLBで守備のベストナインに贈られる「ゴールドグラブ賞」に倣って、1972年に設けられた。当初は「ダイヤモンドグラブ賞」と名付けられたが、1986年から「ゴールデン・グラブ賞」になった。

この賞を目標にしているプロ野球選手は多い。

「この賞を貰うと、自分が今使っているグローブを金色に彩色したトロフィーをくれる。すごく格好いい」と、憧れを口にする選手もいる。

この賞は、MVPやベストナインなどと同様、プロ野球担当記者の投票で決まるが、その選考結果には、首をかしげたくなるものも多い。

そもそも「守備記録」の部門は、投球や打撃に比べて、評価基準となる「数字」が非常に少ない。

守備に関する項目が少なすぎる

NPBの公式サイトの個人記録の守備成績欄にあるのは、以下の6項目だけ。

試合 そのポジションでの出場試合数
刺殺 フライを捕ったり、走者にタッチしてアウトにするなど直接アウトにした回数
捕殺 ゴロを塁に送球するなど、間接的にアウトにした回数
失策 エラーした回数
併殺 ダブルプレーに参加した回数
守備率 (刺殺数+補殺数)÷(刺殺数+補殺数+失策数)

捕手はこれに、2項目がつく。

捕逸 パスボールをした回数
盗塁阻止率 盗塁を企図した走者をアウトにした率

打撃成績が21項目、投手成績が23項目あるのと比べても、非常に少ないのだ。

これだけの情報量で「守備のベストナイン」を決めようと言うのだから、自然、選考は「印象論」や、日ごろから親しくしている選手に投票するなどの「情実論」に傾くことになる。

今回のゴールデン・グラブ賞の顔ぶれを見ながら検証していく。

ここでは、上記の守備の指標に加え、セイバーメトリクスの指標RF(レンジファクター)もつける。これは1試合でいくつのアウトに関与したかという数値で、守備範囲の広さ、手数の多さを示している。

(刺殺+補殺)÷試合数

で導き出せる。

本来のRFは

(刺殺+補殺)÷その守備位置での出場イニング数×9

という数式なのだが、NPBは選手個々の出場イニング数を公表していない。ぐっと精度は落ちるが、それでも重要な指標となる。