ゴールデン・グラブ賞の選考結果は適切なのか
MVPやベストナインも決まり、今年のNPBの全日程が終了した。筆者は毎年、NPBのアワードについて、チェックしている。毎年「これはどうか?」と思う受賞があるのだが、とりわけ「ゴールデン・グラブ賞(正式名称:三井ゴールデン・グラブ賞)」である。
この賞は、MLBで守備のベストナインに贈られる「ゴールドグラブ賞」に倣って、1972年に設けられた。当初は「ダイヤモンドグラブ賞」と名付けられたが、1986年から「ゴールデン・グラブ賞」になった。
この賞を目標にしているプロ野球選手は多い。
「この賞を貰うと、自分が今使っているグローブを金色に彩色したトロフィーをくれる。すごく格好いい」と、憧れを口にする選手もいる。
この賞は、MVPやベストナインなどと同様、プロ野球担当記者の投票で決まるが、その選考結果には、首をかしげたくなるものも多い。
そもそも「守備記録」の部門は、投球や打撃に比べて、評価基準となる「数字」が非常に少ない。
守備に関する項目が少なすぎる
NPBの公式サイトの個人記録の守備成績欄にあるのは、以下の6項目だけ。
刺殺 フライを捕ったり、走者にタッチしてアウトにするなど直接アウトにした回数
捕殺 ゴロを塁に送球するなど、間接的にアウトにした回数
失策 エラーした回数
併殺 ダブルプレーに参加した回数
守備率 (刺殺数+補殺数)÷(刺殺数+補殺数+失策数)
捕手はこれに、2項目がつく。
盗塁阻止率 盗塁を企図した走者をアウトにした率
打撃成績が21項目、投手成績が23項目あるのと比べても、非常に少ないのだ。
これだけの情報量で「守備のベストナイン」を決めようと言うのだから、自然、選考は「印象論」や、日ごろから親しくしている選手に投票するなどの「情実論」に傾くことになる。
今回のゴールデン・グラブ賞の顔ぶれを見ながら検証していく。
ここでは、上記の守備の指標に加え、セイバーメトリクスの指標RF(レンジファクター)もつける。これは1試合でいくつのアウトに関与したかという数値で、守備範囲の広さ、手数の多さを示している。
で導き出せる。
本来のRFは
という数式なのだが、NPBは選手個々の出場イニング数を公表していない。ぐっと精度は落ちるが、それでも重要な指標となる。