「どうして数学を勉強しなければいけないのか」と子供に聞かれたら、どう答えればいいのか。東大生作家の西岡壱誠さんは「数学の知識は大人になってから絶対に必要なものだ。社会で活躍する人は、物事を数学的な思考で捉えている」という――。(第2回)

※本稿は、西岡壱誠『読んだら勉強したくなる東大生の学び方』(笠間書院)の一部を再編集したものです。

ノートとペン
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数学は「大人になってから絶対必要になる」

「数学なんて、勉強しても意味なくない?」

この質問は、いろんな場所でよく聞く問いです。おそらく数学が苦手な多くの人が子供の時に一度は思ったことがあるのではないでしょうか? 英語であれば「外国人と話すため」だと納得できますし、国語であれば「文章を読めるようになるため」と考えることができます。しかし、数学はパッとやる意味が思い浮かびませんね。

算数であれば、「計算ができるようになる必要があるから」と言えるかもしれませんが、数学は難しいですよね。「なんでXとかYとか勉強しなきゃならないの?」「微分積分の問題とか、大人になってから解かないんでしょ?」と言われることも多いのではないでしょうか。

でも実は、数学の勉強って、大人になってから絶対に必要になってくるんですよね。特に東大生の親御さんは、数学の勉強について、「社会で活躍するための技能」としてお子さんに紹介している場合が多いです。

我々もよく、学生から「なんで数学の勉強やんなきゃいけないの?」という質問をされます。

それに対してしっかりと「こういう役に立つ」ということを提示できると、「それだったらやってみようかな」と納得してもらえて、成績が上がることもあります。

“納得しているかどうかなんて成績の向上に違いを生む要素ではない”と考えてしまう人も多いかもしれませんが、そんなことはありません。

本人の納得感は学習意欲や理解度に大きな差を生みます。「数学を勉強する意義」に納得できるかどうかが、数学が得意になれるかどうかという違いを生んでいるのです。今回の記事では、子供たちに伝えたい数学の意義についてお話ししたいと思います。

「お得にタクシーに乗る方法」を考えてもらう

まず、よく聞くのが「点Pがなぜ移動するのか」という話です。「点Pがこう移動するとしたら、60秒後にはどこにいることになるか答えよ」みたいな問題が数学では頻出ですが、なんでこんな問題と解かなければならないんだ、と考えてしまうという人も多いかもしれません。

「移動する点P」に疑問を抱く生徒に対して、筆者はこんな問題を出して考えてもらっています。

友達と遊びに行くとしよう。タクシーを使って移動をするとき、大型タクシーなら2台、小型タクシーなら3台呼ばないといけないという状況。

●大型タクシー
1台につき【最初の1kmまでが1000円】
その後【320mごとに200円が加算される】

●小型タクシー
1台につき【最初の1kmまでが700円】
その後【480mごとに20円が加算される】

この場合、“小型を使うほうが安い”距離は何メートルか?

実はこれは、移動距離と速度に関する東大の問題をベースにした“問い”です。さすが東大の問題だけあって難しくはあるのですが、「点Pがどう移動するのか」という問題を学んだ延長の知識で、中高生でも図解などを通じて考えることができます。回答例は以下です。

▽1000mから1320mであれば
大型2台だと2400円、小型3台だと2700円で、「大型の方が安く」なる

▽1320mから1480mであれば
大型2台だと2800円、小型3台だと2700円で、「小型の方が安く」なる

ですから、答えのひとつは1320mから1480mです(答えは複数あります)。