※本稿は、米井嘉一『食べて若返る!』(さくら舎)の一部を再編集したものです。
運動は気分を安定させ、認知症予防にもなる
運動は脳にも大きな影響を与えます。これまでの研究によって、運動をすることで記憶力や学習能力がアップしたり、気分が安定したり、認知症の予防につながることがわかっています。まず、運動をすると「BDNF」(脳由来神経栄養因子)という物質が脳の中で盛んに分泌されます。
BDNFはたんぱく質の一種で「脳の栄養分」といわれ、神経細胞の新生を促すとともに、シナプス(神経細胞同士の接合部で脳の伝達情報を担っています)の数を増やし、シナプス間の結合も増強させて、神経ネットワークの形成や発達を促進する働きを有しています。
血液中のBDNF量と認知機能との関係を調べた研究でも、BDNFの濃度が高いほど記憶力や学習能力などの評価スコアが高くなるなど、認知症予防に必要不可欠な存在とされます。BDNFの量は65歳以上になると加齢とともに低下しますが、運動によってBDNFの分泌量低下を防ぐことができることもわかっています。
また、運動には、ノルアドレナリンやドーパミン、セロトニン、エンドルフィンといった思考や気分に関わる神経伝達物質の分泌を促す効果のあることが判明しています。さらに、記憶を司る海馬は加齢とともに萎縮しますが、運動によって食い止められることが、いくつかの研究によって明らかになっています。
30代より脳が若い80歳の秘密
そして、最近の研究によって、習慣的に運動をすることで、アミロイドβが脳内に蓄積されるのを防ぎ、アルツハイマー型認知症から脳を守ることがわかってきました。私たちの研究グループでも、そのことを実験によって確認しています。
私たちの脳には、認知症の原因となる「アミロイドβ」を分解・排出するクリアランス機能があります。この働きを示す指標のひとつが「アミロイドβ 40/42比」です。アミロイドβには、アミノ酸が40個つながった「β 40」と、42個つながった「β 42」があります。
このうちβ 42は脳の中で固まりやすく、アルツハイマー型認知症の人の脳では特に多くたまっています。健康な人ではβ 40とβ 42の割合はおよそ9:1ですが、β 42の比率が高いほど、老廃物を排出する力(クリアランス機能)が弱まり、認知症リスクが高くなるといわれています。私たちの研究グループが主催する「健法塾」では、ウォーキングを中心とした健康づくりを続けています。
参加者(80歳前後)と、同志社大学の教職員(30〜60代)を比べたところ、平均で健法塾生のほうがβ 42の比率が低く、つまり脳のクリアランス機能が高いことがわかりました。年齢を考えれば、むしろ「脳が若い」といえる結果です。健法塾生の方々は、毎日7000〜8000歩ほど歩いています。

