「エラーが少ない=守備がうまい」は本当か

ポジション別に評価基準が微妙に異なるが、やはり出場試合数は大きな要素だ。

捕手の山本はセ・リーグで一番多くマスクを被った。これは大きい。RFも1位だ。盗塁阻止率は0.352で4位だが、3割を超えているので合格点だ。独立リーグ出身、ドラフト9位から這い上がった。

投手は菅野。数字的には全く良くないのだが、菅野は5回目の受賞だ。過去、投手のゴールデン・グラブは西本聖と桑田真澄が8回、堀内恒夫が7回、前田健太と菅野が5回と、特定の投手に集中する傾向がある。数字的な根拠ではなく「あの投手は守備がうまい」というイメージによるのだろう。今回の菅野は、復活したことの「ご祝儀」みたいな印象だ。

【図表】セ・リーグ ゴールデン・グラブ賞受賞者
筆者作成

9つのポジションのうち、守備率1位の選手が6人。「失策が少ない選手が、守備のうまい選手なんだから、当たり前だろう」と言われるかもしれないが、実は「守備の本質」はそこにはない。

守備率の不都合な真実

守備率を上げるには「無理目の打球、送球は捕りにいかない」に限る。グラブ、ミットに球が触れなければエラーがつかないからだ。1950年ころ、巨人の川上哲治は「打つだけで一塁守備は不得意」と言われた時期があった。それ以降、無理目の球は捕りにいかなくなり守備率が上がった。巨人の遊撃手、広岡達郎は「川上さんはちょっとボールが逸れると捕ってくれない」とぼやいた。

しかし本当に頼りになるのは、安打になりそうな「無理目の打球」にも果敢に挑む野手なのは言うまでもない。その点では守備率とともにRFも考慮すべきなのだ。

また外野手は3人選ばれるが、実は3人とも「中堅手」だ。日本では左翼手、右翼手、中堅手もすべて「外野手」で一緒くたにされるが、それぞれ役割が違う。右翼手は二塁、三塁への進塁、左翼手は三塁、本塁への進塁を強肩で阻止する役割がある。中堅手は守備範囲の広さが求められる。

MLBでは外野の3ポジションに分けて評価している。NPBもそうすべきだろう。今季で言えば中日の左翼、細川成也は1位タイの6補殺。こうした選手も評価すべきだろう。