一般人→情報屋→犯行グループ

――裏社会において闇名簿を集める、通称「名簿屋」は、どうやって名簿を手に入れるのか。

【取材先】名簿屋は、情報屋から情報を買います。情報屋はカタギから情報を買うんです。デイサービスや家政婦派遣の情報、学校職員の家族名簿、市会議員や村会議員の名簿と、いろいろあります。

名簿屋は、情報屋から名簿を買うとき、安く叩いてナンボ。だから、マスコミさんは相場を知りたがりますが、それは企業秘密です。相場を作らせないためですね。

名簿の流出はカタギ(=一般人)個人のケースもありますが、会社ぐるみの場合もあります。たとえば、正規の合法な名簿屋がある。これは、セールスマンのための名簿を扱う会社です。

学習教材会社なら、ファミリー名簿を売るんです。しかし、こうしたカタギの名簿屋さんも、名簿のオイシサ知ったら、カネのために悪い方に流れてゆくケースもあります。

名簿屋や特殊詐欺の実行犯が、直接被害者に電話を掛けて情報収集するケースもあります。

電話の場合は、有名テレビ番組の制作班を語ったりして情報収集を行っています。

たとえば「○○テレビの『△△ワイドショー』です。来月、日本人のタンス預金に関する特集番組をつくるので、インタビュー調査をしているのですが……。おばあちゃん、タンス預金とかやっていますか」などと、言葉巧みに聞き出します。

電話をかけながら笑みを浮かべている男性
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです

キャッチ、キャバ嬢が情報を売る

――それなら、電話を受けた側も、まさか犯罪のための事前調査とは思いもしないので、つい、本当のことを喋ってしまっても不思議はない。

【取材先】ブランドや高級車の購入者名簿が欲しければ、従業員に接触して、カネをチラつかせてデータのコピー取らせるとか、さまざまな方法があります。

あるいは、カタギさんに「家にカネありそうなところ知らないか。そこに本当にカネがあれば、(儲けの)10%やるから教えてくれない」って言うと、必死で調べてきますよ。こうした生の情報はありがたい。自分がタタキの実行犯(強盗犯)にならなかったとしても、情報自体が売れるんですから。

以上が、これまでの取材で得た情報の一部だ。

最後に出てきた「情報を売るカタギ」は、飲み屋街のキャッチの男性や、キャバクラで働く女性が多いという。にわかには信じがたい話だが、筆者は、この情報収集方法を別の取材先からも聞いている。

確かに、こうした直接的な情報収集方法は効率がいい。裏社会の名簿屋から買った名簿の精度は、使用してみるまで分からない。サラピンだと偽って使い古された名簿を売り付けられたら、強盗に入っても当てが外れる。名簿屋から買う「他力本願」ではなく、自分たちで情報を集める方が、鮮度が高く、正確な情報が手に入るのかもしれない。

もっとも、暴力団がバックに付いているようなトクリュウ(筆者註「匿名・流動型犯罪グループ」)組織には、名簿屋も使い古された名簿を高く売りつけるようなペテンは用いないと思われる。後の報復を恐れるからだ。