知らない業者は家に入れてはいけない
記事冒頭で、犯行グループは、犯行前の調査を行うことがあると記した。犯行の前に資産状況や家族構成などを確認する「アポ電」が有名だが、別の方法もある。その一端を知る機会があった。これは、闇名簿作成のための情報収集ではないかと県警と情報共有した一例を紹介する(捜査中の案件につき、詳しい業務内容は一部伏せている)。
筆者は保護司の立場で、保護観察対象者たちと面会を行っている。ある日、その対象者から入社した会社の業務内容を聞いた。その内容は、営業として各家をまわり、「○○の状態を確認させてほしい」というものであった。
そして○○の状態、訪問時間、住人の情報(何時に誰が居たか)、○○の修繕をする代金(高額)が出せそうかなど、を記録していたと言うのだ。
違和感を覚えた筆者は、その会社(HPでは大都市圏で事業展開と紹介)を調べてみた。すると、HP上の会社紹介文が非常に稚拙で、社員募集欄には待遇が明記されていない。さらに、ある支社の住所が筆者が住む自治体にあったので検索してみると、それらしい会社は存在しなかった。非常にこれは怪しい会社だと判断し、警察に情報提供した次第である。
関東で相次ぐ強盗事件でも、リフォーム業者、水道業者、屋根修繕業者、電気業者など、さまざまな業者を偽って下調べを行っている疑いがある。知らない業者が訪問してきた場合、家に入れないことが、下調べされないためにも肝要だ。
犯人は暴力団でもトクリュウでもない
関東では強盗事件が頻発し、住民の方々を恐怖に陥れているが、被害金額を見ると数十万~数百万円だ。強盗の際に住人に対し暴力を振るえば強盗致傷罪になる。その法定刑(法律で決められてる刑罰)は無期懲役または6年以上の懲役だ。懲役の上限は最長で20年となる。語弊を恐れずに言えば、犯行の内容に見合うものではない。
暴力団をはじめとする反社会的勢力は、リスクとリターンの計算ができる。たとえば、1000万円を奪って、万一刑務所に収監された場合、10年の刑だと割に合わない。しかし、数億円を奪って5年の刑なら割に合うと考えるのだ。
昨今、互いに面識のない「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」が話題だが、彼らにとっても強盗などの強行犯は主流ではない。ハイリスクの割にローリターンだとわかっているからだ。
頭のいい犯罪者は、「SNS型投資詐欺」や「ロマンス詐欺」(最終的に投資詐欺に誘導、もしくは投資名目で金銭を詐取)にシフトしている。
日本経済新聞のネットニュースによると、2024年1月から6月のSNS型投資詐欺被害額は、506億3000万円にのぼり、前年同月比7倍であった。1件あたりの平均被害額は1418万円で、被害者は50~70代が全体の70.9%を占めているという(2024年7月31日)。
投資詐欺は、ローリスク・ハイリターンである。人を騙すツールがSNSのため、アカウントを消去したり、「テレグラム」など匿名型のSNSを利用すれば、追跡が極めて困難になるからだ。
では、いったい誰が関東の連続強盗事件の主犯格なのか。計算もロクにできない犯行グループの正体はどんなものなのか。