日本の治安悪化が深刻化している。ジャーナリストで元日本経済新聞編集委員の大橋牧人さんは「山間部にポツンとある一軒家で強盗が多発している。かつては事件の発生数も少なかったが、そのことに安心した不用心な家庭が狙われるという“盲点”を突かれてしまった。犯罪の国際化も進んでおり、いままでは考えられなかった凶悪事件も発生している」という――。(第2回)

※本稿は、大橋牧人『それでも昭和なニッポン 100年の呪縛が衰退を加速する』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

日本のパトカー車両の屋根
写真=iStock.com/kuremo
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山間部で次々と起きた“ポツンと一軒家強盗”

栃木、長野、群馬、福島の4県で、2024年4月末から5月中旬にかけて、山間部の住宅の少ない地域にある民家を襲う緊縛強盗事件が相次いで起きた。被害に遭ったのが、いずれも周囲から孤立する民家で、“ポツンと一軒家強盗”とも呼ばれるこれらの事件。

犯行は、同一犯による可能性が高いとみられる。普段はのどかな場所で起きた突然の凶行に、住民は「この辺りで、こんな事件は初めて」とおののいていた。

4件の緊縛強盗事件で、最初に起きたのは、4月30日。栃木県日光市で、一人暮らしの75歳の男性が就寝中に襲われた。男性は、手足を縛られ、暴行を受けた上、現金3万円余りの入った財布を奪われた。押し入ったのは、20代くらいの2人組の男で、片言の日本語で金を要求した。

続いて、5月6日には長野県松本市で、8日には群馬県安中市で、さらに、14日には福島県南会津町で、民家に押し入った複数の男に住民が現金を奪われる事件が起きた。共同通信によると、栃木、群馬、長野3県警の合同捜査班は、同月16日、栃木県で起きた強盗事件の被害者名義のキャッシュカードで現金を引き出そうとしたとして、窃盗未遂の疑いでベトナム国籍の男(25)を逮捕。出入国管理・難民認定法違反(不法残留)容疑で同国籍の男(23)を逮捕した。

最近、都市部では、防犯カメラがあちこちに設置され、何か事件が起きても、短時間で犯人の足跡が追えるようになった。しかし、人通りが少なく、防犯カメラもあまりない地方の山間部は、一種の盲点だ。むしろ、強盗犯に狙われやすい危険地帯になりつつある。