右京が幽霊を信じる本当の理由

だが、右京には右京ならではの幽霊に関心を抱く理由もあるだろう。

思うに杉下右京という人物は、人間の思いが持つ力というものを人一倍信じているのではあるまいか。確かに皮肉屋でとっつきにくい。浮世離れもしている。しかしこころの奥底では、人間の抱く感情や情念というものの持つ力を尊重している。

それは情にもろいということではなく、強い思いはそれを必要とする誰かに必ず届くということである。そう信じる気持ちが、どこかで幽霊の存在を信じることにつながっているように思える。

実は、先述の「猛き祈り」の老人は弱い立場に置かれている人びとに年齢や性別を問わず手を差し伸べ、共同生活を送っていた。

だが世界には戦禍や災害(老人の部屋の新聞記事にはボランティアで薫がいる「サルウィン」の災害の記事もある)がずっと絶えないことを憂い、即身仏になることを決意したのだった。

そしてその老人は享のもとに幽霊として現れ、「申し訳ありませんでしたねえ」と共同生活者たちが引き起こした享への暴力行為を謝罪する。肉体は滅んでも思いは残る。

「税金の無駄遣いです」右京は銃を嫌う

そう考えると、右京が拳銃を嫌悪することにも合点がいく。「相棒」には警察が犯人を狙撃するシーンも何度かあるが、右京がそこに加わることはない。

影と銃
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シーズン2第4話「消える銃弾」は、右京の拳銃観が明らかになる回だ。雑誌記者が銃で撃たれ、殺される事件が起こる。だが傷跡から見て体内に残っているはずの銃弾が見つからない。

そこで右京はかねての知り合いで改造銃に精通した笘篠(下條アトム)という男に話を聞きに行く。

この回は、警視庁内の訓練場で薫が射撃訓練をしている場面から始まる。見事な腕前だ。元々は捜査一課にいただけはある。この時点では、あわよくば捜査一課に戻りたいという気持ちもあるので訓練に怠りない。

薫が「右京さんはやらないんですか?」と聞く。すると右京(射撃訓練場に紅茶を入れたガラスポットとティーカップを持ってきている)は言下にこう答える。

「銃は嫌いです。銃を使えば血が流れるし、相手に致命傷を与えます。警察もいつまでこんな野蛮で旧式な武器を使っているんでしょうねえ。弾もタダではありません。税金の無駄遣いです」。