豪華な列車が次々に誕生しているワケ

鉄道輸送のありようを変える事例も出てきた。本来鉄道はAからBへの移動の手段であったが、Aから出発してAへ戻る、つまり移動ではなく乗車そのものが目的となるサービスが登場した。

九州の「ななつ星」、西の「瑞風」、そして東の「四季島」といったクルーズトレインである。

JR九州の「ななつ星 in 九州」
写真=Wikimedia Commons
JR九州の「ななつ星 in 九州」(写真=Rsa/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

豪華な設備と盛りだくさんの趣向で、新しい旅行の形態を創り出した。国鉄の末期に流行ったジョイフルトレインは団体列車で日帰りユース、そして改造車ベースであったが、こうしたクルーズトレインは個人のお客で宿泊すること、新造車を対象としているところに違いがある。もちろんサービスのレベルはまったく違う。

こうしたスペシャルティな車両は移動を目的とした特急車両でも登場している。JR東日本の「サフィール」や近鉄の「ひのとり」、東武の「スペーシアX」などがそうであろう。

これらの車両では、これまでの公共交通としての鉄道というコンセプトではなく、もっと違う、なおかつよく練られたコンセプトとそのソフト、そしてそれを実現するハードのデザインが必要となってくる。

もちろん車両は長く使われるものであるために、そうしたソフト・ハードが古びないようにすることは言うまでもない。

人口減少の時代に「鉄道」はどうあるべきか

社会の変化に応じて、鉄道デザインも変わってきた。輸送力が問題とされた時代はいかにたくさんの人を運べるか、が主題となったし、地域文化や競争力が問われるようになるといかにして鉄道の魅力を発揮するかがテーマとなった。そしてこれからの人口減少時代の鉄道では、鉄道車両はどうあるべきだろうか。

南井健治『鉄道車両デザインの教科書』(イカロス出版)
南井健治『鉄道車両デザインの教科書』(イカロス出版)

当初デザインは物に付加価値を与えるために進化してきた。しかし社会が変わっていく中で付加価値では意味がない。社会にとって、あるいは鉄道会社にとっても新しいありようとして新しい価値が求められる。形や色、飾り付けもデザインとして重要であり、否定するものではない。

しかし車両に関わるデザイナーはそれ以上にこの先を見据えた、ソリューションとしてのデザインを考えなければならないし、車両のデザインはその最右翼であると確信する。

これからも時代を先取りした、その地の文化に根ざした優れたデザインの車両が登場することを願ってやまない。

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