アラブ人は床との関係が独特である

また、ドバイメトロをデザインした際、外観形状とカラーリングはわりとすんなり承認されたが、インテリアは何度出しても通らない。困った挙句、現地のインテリアデザイナーをコンサルタントに雇ってアドバイスをもらった。

ドバイメトロの車両
写真=iStock.com/bloodua
ドバイメトロの車両

ドバイのホテルのデザインを多く手がけているデザインコンサルタントのジョン・カロランは、即座に「床に問題がある」と言った。通常、車両ではそれほど床にパターンを持ち込むことはない。汚れにくさや耐久性が問われることが多く、われわれの提案も単色のゴム床であった。

常識的にはできるだけ継ぎ目を少なくし、継ぎ目の劣化による事故をなくすことがよいとされる。彼のサジェスチョンは細かな柄で構成することであった。

日本の床ではプリントしたものを使って柄を実現しているが、ゴム床ではそれができず、色の違う部品をつないでいかざるを得ない。実際に1両当たり200ピース以上の部品をつなぐため、この実現には非常な苦労があったが、彼の提案したモザイク張りをプレゼンしたところ、すんなり承認された。

アラブではひざまずいてお祈りをするので、床との関係が独特なのだ、と彼は言ったが、確かにじゅうたんやモスクのモザイクの床など、同じく床にひざまずくけれども日本とはまったく違う感性である。

つるつるの握り棒は日本だけ

握り棒ひとつをとっても、日本ではつるつるのバフ仕上げがほとんどであるが、世界ではおよそ見当たらない。

南井健治『鉄道車両デザインの教科書』(イカロス出版)
南井健治『鉄道車両デザインの教科書』(イカロス出版)

アメリカやヨーロッパではヘアライン仕上げとして握ったときに手が滑らないことを考慮しているし、凹凸のついたエンボス仕上げのパイプとしている例もある。

視力に問題のある方にも安全なように、目立つ黄色や赤にしている国もある。それぞれに理屈があって、どれがベストということはできない。

これらの例はその走る地域の文化に起因するものであり、いくら日本では当然で、いいと思われるものであっても、そのまま持ち込んで受け入れられるかどうかはわからない。

いいものも相対的なものなのであり、こういう点でも鉄道車両はその地域だけのものと言うことができる。

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