スーパー業界「50年に一度」の大転換期
USMHにダイエーの関東事業とピーコックストアが加わると共に、650億円を追加投資することで、統合効果40億円を実現するのだというが、既にトップシェアを達成したイオンが体制強化を急ぐのには、さらにもう一つ別の理由がある。それは、スーパー業界が50年に一度の大転換期を迎えつつあり、業界の寡占化が一気に進む可能性があるからだ。
スーパー業界は寡占化しないことで知られ、今でも全国各地に多様な地元銘柄が存在感を示しているし、中小零細事業者が数多く生き残っている。この理由について、日本の地域ごとの多様な食文化が均一化を阻んでいる……、といった情緒的な説明がまことしやかにされているのだが、実はそんな話ではない。
魚食、生食文化によって、日本の消費者が鮮度にうるさいことは間違いなく、このために日本のスーパーのオペレーション(OP)は、生鮮品の小分け、パック詰めを各店舗のバックヤードでする、という日本独特のやり方(インストアOP)がデファクトスタンダードになっている。店で切り分けているから生ものが新鮮です、というアピールであり、それは生鮮売場の後ろがガラス張りになっていて、作業している様子をわざと見せている、という風景を思い出してもらえれば、なんとなく理解してもらえると思う。
人手不足とインフレで大手が有利に
本来は集中センターで小分け、パック詰めするのが、チェーンストアの生産性を向上させる。日本では鮮度優先のため、この生産性を犠牲にしてきた、ということになる。規模の利益を抑制するものであったため、これがスーパーにとってのハンデとなり、大手も中小も生産性の差が付きにくかった、ということを意味している。多様なスーパーが残れたのは、このハンデがあってのことだということをまず理解していただきたい。
つまり、このハンデが外れれば、規模の利益は一気に大手に有利に働く、ということでもある。そして、デフレからインフレへと完全に転換した今、そのハンデが消失する方向で動き始めたのである。
インストアOPの生産性が低いのは、作業が店舗ごとに分散して人手がかかるから、である。デフレ時代にはパート従業員が確保できたため、こうした労働集約的なOPが維持できたのだが、インフレ転換後の今、人出不足と人件費の高騰により、持続することが難しくなってきた。その上、物価上昇の価格転嫁はフルにはできず、冷蔵冷凍機器だらけなのに電気代は高騰している。
対策は集中加工センターを使って、インストアOPの工程を効率化するしかないのであるが、大規模設備投資が必要な上に、規模がないと投資回収ができない。つまり、これこそが規模の利益、ということであり、標準がここに移行することは、大手に一方的に有利になること≒ハンデ戦の終焉を意味する。ざっくり言うなら、これまで多様な企業が併存していたスーパー業界が、ここから一気に寡占化へ向かう、ということなのである。

