「疑念」が生まれた時点で致命傷となる
そして、もし女系天皇が誕生すれば、「神武天皇の男系子孫ではない人物」が、天皇を名乗ることを意味する。見方によっては、歴史的な文脈における「天皇」ではない別の何かが、「便宜的に同じ名前を名乗っているに過ぎない」という論考すら可能になってしまう。
「今の天皇は本当の天皇といえるのか――。こういう疑念が、国民の間に1ミリでも生まれてしまうこと自体、皇室制度にとっては致命傷です。国民に対して正統性の完璧な説明が少しでも揺らいだ瞬間、皇室制度の存立根拠を危うくしてしまう恐れがあるのです。
もし将来、『愛子天皇』の子から“女系天皇”となり、その子や直系子孫が不人気であったり、資質に欠けると見なされたりすれば、『そもそも正統性のない家系なのに、天皇と言えるのか』という議論が巻き起こることが考えられる。これが、天皇の姓名が変わったという見方が出てきてしまう“易姓革命”と捉えられかねないリスクです。
例えば、女系天皇が認められ、女性天皇が山田さんと結婚したとすると『日本の大昔から続いてきた神武王朝ではなく、今の天皇は山田さん王朝ではないのか』と。これは正しいか間違いかの問題ではありません。そのような『疑義』や『解釈』が広まること自体が、世論を二分し、皇室制度の根幹を揺るがす甚大なリスクとなりうるのです」(施教授)
「アクロバティックな即位」の背景
そもそも、皇位継承における「男系継承」という根本は、天皇の絶対的な権威を保つための、極めて高度で非代替的なシステムだ。皇室典範第1条に記された「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」という文言は、それが伝承であったとしても初代神武天皇から連綿と続くとされる父方の血筋を、唯一無二の天皇の正統性の根拠とする現代の公式の宣言といえる。
男系継承ルールは明治期成立の皇室典範で規定されるまで存在しなかったという言説もあるが、「明文化されていなかった=ルールは存在しなかった」との解釈は到底、通らない。先代の天皇から10親等(約200年)離れた継体天皇や、8親等離れた光仁天皇(約130年)の例など、そのアクロバティックな系譜を見れば、それは明白だ。
「確かに、歴史上、10代8人の女性天皇が存在したのは事実です。しかし女性天皇は例外なく男系で、即位後は独身であり、出産もありませんでした。この事実は、女性天皇は次の代にも男系の皇位を持続するための『中継ぎ』の役割として理解されていたと解釈するのが自然です」

