※本稿は、中島恵『中国人は日本で何をしているのか』(日経BP)の一部を再編集したものです。
かつて人気だった「生保レディ」の今
一方、日本企業にとっても、中国人採用に積極的になる事情がある。長年、大手生保の営業社員として働き、数年前に退職した知人の日本人女性は次のように語る。
「あくまでも個人的な実感ですが、2015年頃から、日本人が保険業界にあまり入ってこなくなりました。私が在籍していた都内営業所の当時の営業社員は約60人。数年後に50人になり、私の退職後、今は二十数人で、隣町の営業所との合併が噂されています。
かつて生保業界は子育てが一段落した女性の再就職先として人気があったんですよ。時給仕事より稼げるし、時間も融通が利きますから。ただし、ノルマが厳しい、親族を加入させる必要がある、といった先入観がありました。現在は、必ずしもそんなことはないのですが、生保業界に対するイメージですね。
生保の営業といえば、以前は『足で稼ぐ』ものでしたが、現在は担当企業でさえ入館セキュリティが厳しくなって、昔のように簡単に会社訪問ができない。そういう状態で、新規の顧客をどうやって獲得するのか、悩んでいる人は多いと思います」
足で稼ぐ営業スタイルはもう限界…
さらにこの女性によれば、ネット保険などが盛んになった影響で、かつてのように営業担当が顧客に詳細なヒアリングをしてプランを作成、提案するというビジネスモデルが成立しにくくなったそうだ。
また各生保会社が提供する生保商品を比較検討するサービスも盛んになる一方で、営業担当者の顧客との接触も極端に減った。契約の確認で一年に一度オンラインでしか会わない、などは当たり前で、新しいプランを提案する機会自体があまりない。時代が変化し、自宅訪問も難しくなっている上、個人情報も突っ込んで聞きにくくなった。顧客が営業から説明を受けることを「面倒くさい」と思うようになったこと、以前より人間関係が希薄になったことなどもあり、営業職という仕事そのものが難しくなっている。
そのため生保営業を志望する日本人女性が減って、人手不足が深刻化しているのではないか、とこの女性はいう。生保で数千万円も稼げるのは、昔からこの仕事をやっていて、すでに人脈を得ているカリスマ営業くらいだそうだ。

