「母国語で相談できる安心感がある」
日本人であれば、高校や大学時代の友人や、就職後いずれかのタイミングで「知り合い」から生保加入を勧誘された経験を持つ人が多い。だが、考えてみると、留学や就職で来日した中国人は、周囲もほとんど中国人なので、そういう機会があまりないだろう。
張さんは「日本での生活がだんだん長くなり、家族が増えて生活に余裕が出た人は、将来に備えて生保に入りたいという気持ちが強くなるようです。万が一を考えるのは縁起が悪いと躊躇する人もいるのですが、そういう人には貯金型の商品を勧めています。
中国人は、日本人にこんなことを聞いて笑われないかとか、日本語で聞くのが恥ずかしいという心理もありますが、中国人同士なら母国語で細かな質問もできるし、いつでもSNSで連絡できるという安心感があります」と話す。
日本にこれだけ多く居住する中国人を顧客ターゲットとするなら、その国の人材を営業職員として採用するのは当たり前の戦略だ。中国人なら、中国人にどんな生保商品が向いていて、どんなプランを提案したらよいのかがすぐわかる。顧客側も中国人営業には心を開きやすい。これは生保に限らず他業界でも同様だろう。銀座のブランドショップで、中国人スタッフが採用されるのと同じ理屈だ。
手つかずの「新たな市場」をどう開拓するか
現在、日本の生保会社にどれくらいの中国人営業社員が所属しているのかはわからないが、営業社員である彼女たちは「在日中国人が90万人もいるのだから、まだ全然(中国人営業社員の数は)足りていない」と感じている。
人口減少をはじめ、時代の変化に伴い、日本人の新規顧客の開拓が徐々に困難になっている。そんな中、在日外国人市場はほぼ手つかずの状態、といってもいい過ぎではない。日本企業にとって、彼らは「日本国内」における新たな市場となる。冒頭で紹介した張さんは、生保の若手優秀社員の表彰式では、全体の1割がベトナムなど中国以外の「外国人」だったと話していた。
生保営業が「外国人なし」では成立しない時代がすでにそこまで到来しているのではないか、と私は強く実感させられた。


