中国人の「優秀な営業成績」の秘密とは

それにしても、中国人の営業成績がそんなによい理由は何なのか。取材を重ねて感じたのは、在日中国人の間にリアル、SNSそれぞれに濃密な人間関係が構築されていて、それを駆使できることだ。日本人の人間関係が希薄になっているのとは真逆の現象である。

彼らが中国人だけで独自のネットワークを築き上げていることは、前著『日本のなかの中国』や前々著『中国人が日本を買う理由』でも紹介してきた。

かつては日本語学校などの同級生や同郷の人しか知り合いがいなかった在日中国人だったが、14~15年頃から中国で起きたSNS革命の影響を受けて、「友人の友人」が増え、雪だるま式に知り合いが増えていった。

大人になってから来日したのに、母国にいたとき以上に日本国内に中国人の知り合いが多いと話す人もかなりいる。むしろ「異国」に住んでいるからこそ、中国人同士のつながりを意識的に求め、助け合いながら生きている、という側面もあるのだろう。

彼らは中国発のメッセージアプリ、ウィーチャット(微信ウェイシン)を利用し、同郷や同窓とつながっていく。さらに地域や同業、子どもの保護者同士など、来日後の人間関係が広がり、数多くのSNSグループを作っている。私自身、20くらいのグループに入れてもらっているが、多い人だと50以上のグループに入り、交流している。

WeChatのロゴ
写真=©Jaque Silva/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
WeChatのロゴ

前著でも、中国人だけで回る、日本国内の経済ネットワーク(中国式エコシステム)を紹介したが、それは生保業界でも同様で、生保商品を売る人、買う人のいずれも中国人だ。

イベント参加だけで年200人以上と繋がる

では彼女たちは、具体的に、どのように営業しているのか。大手生保の優秀社員、張さんに聞いてみた。

「私のウィーチャットには約1000人いますが、表彰されたときの写真を投稿する以外、生保の宣伝は一切やっていません。

会社からSNSの営業利用は禁止されています。ただし同業者には、『日本人はウィーチャットをやっていないからバレない』と隠れて利用する人もいます。でも私は、会社の規則は守っています。営業職は自分という人間を信頼してもらうことが最も大事ですから」

張さんは「知り合い」を増やすため、自身の出身地の同郷会のほか、趣味のスポーツの会、毎年4月頃に東京・池袋で開かれる東京国際交流フェスティバル「華の春」、9月頃に代々木で開かれる「チャイナフェスティバル」、春節の在日中国人団体主催によるパーティー、在日中国大使館の行事などに積極的に出席して交友を広げている。

1年に数回行われるこれらのイベントに参加するだけで、毎年200人以上の中国人とウィーチャットで繋がることができる。

出会ってすぐに保険の話はしないようにしているが、名刺を差し出すと、相手は目を輝かせ、「えっ、生保の営業をやっているの? 私は日本の生命保険に興味があるので一度ゆっくり説明してほしい。ウィーチャットで繋がってもらえますか」といわれることも多い。張さんの顧客は9割が在日中国人だ。