長時間デスクワークを続けるとパフォーマンスは落ちがちだ。どのタイミングで休息をとるべきか。筑波大学の松井崇准教授は「脳の性能は疲れを実感する1時間前くらいから落ち始めているため、疲れを感じた時点で手遅れだ。それより前に指先に疲れの兆候が出ることがある」という――。
なぜ桜木花道は最後の最後でパスミスしたか
脳疲労とは何か? というお話をするとき、私は大好きな名作バスケットボール漫画『SLAM DUNK』のあるシーンを例に挙げます。
インターハイ予選決勝リーグで強豪・海南大附属高校と対戦する主人公・桜木花道が所属する湘北バスケ部。その試合の最終盤、1ゴールを競り合う緊迫した場面でリバウンドを制した花道は、逆転の望みを託してキャプテンの赤木剛憲(ゴリ)にパスを出すのですが……。
ボールを受け取ったのは、ゴリと似た体格の海南のセンター高砂一馬。試合の残り時間は19秒。この痛恨のパスミスによって、湘北は2点差で敗れてしまうのでした。
なぜ、花道は高砂にパスを出してしまったのか。実はこの場面、脳の疲労による認知機能の低下が関係しています。つまり、脳疲労が招いたミスで湘北は負けた……と、私は解釈しています。
体は疲れていないのに判断力が低下する
現代の私たちの多くは、バスケの試合のような激しい運動をする機会はほとんどありません。でも、花道がしたような重要な判断ミスをしてしまうことがあります。その原因の1つとなっているのが、体は疲れていないのに、判断力が低下している脳疲労と呼ばれる状態。私たちは知らず知らずのうちに、脳を酷使し、疲れさせてしまう環境のなかで働き、生活しているのです。
たとえば、こちらの問いかけに対して瞬時に答えを返してくれる生成AIとのやりとり、1つのメッセージに対応している間にも聞こえるLINEの通知音、ランチもモニタの前で済ませる繁忙期のデスクワーク、テレビでYouTubeを見ながらスマホでXをチェックする夜のひと時……。
AIとITで効率的に仕事が進むようになり、どこでも好きなエンタメを楽しみ、多くの人と気軽にコミュニケーションを取れるようになった一方で、私たちの脳には高い負荷がかかっているのです。(※)1


