「疲れたな」と感じたときにはすでに手遅れ

つまり、「疲れた」と感じてから、休む。では遅いのが、脳疲労。本人が自覚したタイミングでは、すでに集中は途切れがちで、判断力は鈍り、情報の処理に問題が生じている……。脳の性能が落ちている状態なのです。

たとえば、私も夜遅くまで論文を書くことがあります。すると、調子よく書いていたつもりの文章が翌朝読み直すと、誤字だらけだったり、文脈がつながっていなかったり……。個人的な体感としては、「疲れた」と実感した1時間前くらいから脳の性能は落ち始めているんだと思います。

では、そうなる前に脳疲労をセルフチェックすることはできないのか。eスポーツの研究では、脳の活動状態を間接的に示す「瞳孔の大きさ」を測定しています。脳が活性化すると瞳孔は開き、疲労すると縮んでくる。(※)6-7

ただ、この瞳孔径を計測するのは専用の設備が必要で、一般的には難しい。そこで、もう1つ脳疲労のサインとして使えそうなのが体表面温度の低下です。疲れを感じる前に手のひらや鼻、口の周りの温度が2℃ほど下がってきます。(※)8

脳疲労のサインを見逃すな!

キーボードやマウス、スマホなどを操る指先に「冷え」を感じたら、それは脳疲労(認知疲労)が始まっているサインといえるでしょう。

脳疲労は、「疲れた」とはっきり自覚する前に、「実行機能(集中力の維持や、情報の適切な処理を司る脳の司令塔機能)」の低下として現れることがあります。以下のような兆候に一つでも気づいたら、脳のパフォーマンスを回復させるために、一度作業を止めて休憩を取りましょう。

□ 指先の温度低下(生理的サイン):室温は変わらないのに、指先に「冷え」を感じる
□ 言語出力の停滞(処理スピード):メールや資料作成で、適切な言葉がパッと浮かばない、または変換ミスや誤字が増える
□ ワーキングメモリの過負荷(正確性):普段なら間違えないような計算ミスや、単純なコピペ作業でのエラーが出る
□ 抑制機能の低下(注意の逸脱):作業の合間に、無意識にスマホを手に取ったり、ニュースサイトを眺めたりしてしまう
□ 認知の柔軟性の低下(切り替え困難):仕事の優先順位が整理できなくなったり、些細な修正に固執して時間が過ぎたりする
□ 主観と実態の乖離(予測のズレ):「まだ集中できている」と思っているのに、30分経っても想定したほど進捗していない

オフィスでノートパソコンを操作
写真=iStock.com/Delmaine Donson
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