働く人の半数は限定社員
限定社員。
こう聞くと、何か特別な働き方のように感じますが、実は既に多くの人が限定社員として働いています。
政府は現在、非正規社員を正規社員に転換する政策を進めています。安倍晋三首相は「非正規という言葉をこの国から一掃する」とまで発言しています。その際、有力な受け皿となるのが「限定正社員」です。政府は、「多様な正社員」という表現を使っています。
何が限定かというと、「職種や職務」「勤務地」「労働時間」といった要素を限定した働き方ということです。たとえば、「営業マンとして、○○支店で働きます」「本社管理部で、経理職として、10時から16時まで働きます」といった感じです。
さて、厚生労働省が2012年3月に発表した「『多様な形態による正社員』に関する研究会報告書」によると、約50%の会社が限定正社員区分を導入。また、労働政策研究・研修機構が10年8月に実施した「多様な就業形態の従業員の実態調査」によると、正社員の中で限定正社員の占める人数割合は22%弱となっています。
「何だ、まだ2割じゃないか」と思われるかもしれませんが、あくまで正社員の中での割合です。現在、企業で働く人のうち正社員は約6割。残り4割は、非正規社員ということになります。パート・アルバイトや派遣社員など非正規社員の大半は、限定社員です。パート社員や派遣社員なのに、全国どこに転勤するか分からないケースは稀でしょう。そもそもパートタイムである時点で、時間限定です。すなわち、企業で働く人の約半数は、何らかの「限定」社員ということになります。
一方、非限定の社員とは、どのような人たちでしょうか。
職種、勤務地、労働時間とも、企業の方針によって流動的な社員。「新卒社員は、採用決定時点ではなく、入社前後に勤務地や所属部署を決定する」という会社は少なくありません。まさに非限定の最たるものです。「人材育成のために、部署間ローテーションを行う」「営業拠点活性化のため、定期的に転勤を実施する」といった方針も同様です。