スマホに依存すると、どのような弊害があるのか。「脳トレ」で知られる東北大学教授の川島隆太さんは「成長途中である子どもの脳はもちろん、大人の脳にも悪影響を及ぼす。例えば、スマホで調べた内容を忘れてしまったという経験はないだろうか」という――。

※本稿は、川島隆太『脳を鍛える! 人生は65歳からが面白い』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

地下鉄のプラットフォームでスマホを使用しているビジネスパーソン
写真=iStock.com/kasto80
※写真はイメージです

スマホ依存の子どもは脳に異変が…

なんといってもやめたいのは、安易にスマートフォンに頼る習慣です。

この20年ほどの間に、私たちを取り巻く環境は大きく変わりました。スマホ、パソコン、タブレットなどの電子機器が急速に発達して、今や日々の生活に不可欠となっている人が多いことでしょう。しかしこれらの長時間利用は、脳に大きなダメージを与えます。そのことは単なる印象ではなく、科学的な実験で見えてきた事実です。

私たちが行った調査(※)では、スマホやタブレットなどのマルチメディア端末に触れている時間が多い子どもは、大脳の約3分の1の領域と、大脳白質(神経線維)の多くの領域で発達が停滞していることがわかりました。

Takeuchiら Human Brain Mapping 2018

また、前頭前野の活動が低下し、情動の抑制が利かなくなり、キレやすくなることがわかっています。本来子どもは家族や友人と語らい、遊びや運動で身体を動かすことで心身が刺激され、脳も発達していくのです。ところがこうした機会が電子端末を始終触っていることで失われ、脳の発達にも影響していると考えられます。

集中力が広告収益の犠牲になる

では、脳が成長した後の成人ならいいのでしょうか。デジタル機器に依存した生活は、成人であっても脳に悪影響を及ぼします。

第1の弊害は、集中力の欠如です。スマホで何かを検索したり、コンテンツを視聴したりすると、関連動画やほかのコンテンツが表示されることがありますね。こちらの意思とは関係なく、短い間隔で絶え間なく異なる情報が与えられます。ひとつの情報を見ることに集中しようとしても、別の情報が割り込んできて集中できません。

このように、さまざまな情報が割り込んできて、注意がいろいろなものに(勝手に)向いてしまい、ひとつのことに集中できないことを心理学では「スイッチング」と言いますが、デジタルで提供されるコンテンツは、数多くの動画を見てもらうことで収益が上がる仕組みになっています。

そのため、わざと集中力が途切れ、ほかの番組に興味が向くようにつくられているのです。しかし、この「スイッチング」を繰り返していると、脳は電子機器に触れていない時間も集中力が弱まり、注意力散漫になります。