スマホの検索結果を忘れてしまう理由
第2の問題は、記憶力の低下です。脳の前頭前野は「ちょっと難しい」「ちょっと面倒」というときに活性化します。例えば何かわからないことがあったときに、辞書で調べると前頭前野が働きますが、スマホで調べ物をしても、ちっとも活性化しません。
これは、すぐに答えがわかる、覚えられなくてもまたすぐ調べられるということで、脳が怠けてしまい、覚えたり、理解したりするのをやめてしまうのです。この「スマホで調べたけれど、忘れちゃった」という状態は、皆さんも経験があるのではないでしょうか。
この脳活動が上がらない状態は、調べ物だけでなく、SNSツールでのメッセージのやり取りでも起こります。
予測変換機能が言語能力を奪っている
スマホやパソコンの、文字の予測変換機能も脳のためにはよくありません。言語能力を衰えさせてしまいます。
私は以前、手書きで手紙を書く場合と、パソコンや携帯電話で文字を打つ場合の脳活動を比較する実験を行いました。すると、手書きの場合は前頭前野が活性化しましたが、キーボードや携帯電話で文字を入力しても前頭前野はほぼ反応しませんでした。
文字を手書きで書くときには漢字をイメージする、イメージしたものを書いて再現する、という2段階の脳の使い方をするのに対し、キーボード入力ではこうした過程が不要になります。さらに予測変換機能を使えば、その語句を思い出したり、理解したりしていなくても文章が書けてしまうのです。
前頭前野が働かなければ言語能力は高まりませんし、新たに触れた言葉を覚え、語彙を獲得することもないのです。
語句の調べ物だけでなく、スマホの地図のナビゲーションシステムも同様です。自分のいる位置をイメージしながら把握する、目的の場所を調べてそこに至る道を探す、といった脳の活動が不要になるのですから、こうしたことを繰り返しているうちに当然脳の力が衰えます。