※本稿は、加藤俊徳『老害脳』(ディスカヴァー携書)の一部を再編集したものです。
睡眠障害が「老害脳」化のリスクを高める
私たちの日常生活の中で「老害脳」化に影響を与える見逃せない要因があります。それが「睡眠」です。
まず、うつ病の人の約8割が、睡眠障害を抱えていることが明らかになっています。そして、「老害」の被害がうつ病を引き起こすだけでなく、逆にうつ病が「老害脳」を引き起こすことも懸念しなければなりません。
これは、睡眠障害と閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)が、「老害脳」とも関係性が深い「アルツハイマー型認知症」の誘因になると考えられているためです。
睡眠障害とは、睡眠時間が短かったり、寝つけなかったり、途中で目が覚めてしまうなどのことです。また、閉塞性睡眠時無呼吸症は、睡眠時に何らかの理由で息の通り道が狭くなってしまい、無呼吸になってしまう症状であり、睡眠障害を引き起こす代表的な疾患です。
注意力、記憶力、実行機能が低下
一方で、アルツハイマー型認知症は、脳にβアミロイドという物質がたまることで引き起こされると言われています。OSA患者は、夜間に断続的に酸素不足に陥ることで、髄液中のβアミロイドの値が低下し、乳酸値が増加します。これは、記憶障害との相関性があることがわかっています。しかし、CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)という治療を受けることで、このような相関性が無くなることもわかっています。
さらに高齢者ほどOSAになりやすく、放置すると認知機能が低下します。すると、認知症の手前である、SCD(主観的認知機能低下)患者の場合、症状がさらに悪化することも明らかになっています。
これらのことから、睡眠障害は認知機能を衰えさせ、認知症の手前の状態としての「老害脳」を引き起こしかねないことが理解できます。
中年期にはOSAがしばしば注意力や記憶力、実行機能を低下させます。そして、CPAP療法はその改善に役立つのです。