配置転換してもあまり効果がない

彼らはもともと能力も高く、大きな問題を抱えていなかったのに、ある企業、あるいは部署にたまたま巡り会ったことが残念な結果に結びついたわけです。これからを担う若い方たちが、こんなにも苦しんでいるということをまず知っておいていただきたいと思います。

そして、私が知る限り、会社がそうした事案に直面した中でも、その対応は「何もしない」「休ませる」「配置転換する」の3タイプに分かれます。特に、状況をある程度把握しているのに「何もしない」というのは最悪で、今後こうした無関心さに対しては、いっそう法律的な責任を問われる流れになっていくでしょう。

問題は残りの2つです。「休ませる」、つまり休職はひとまず正しい判断であることが多いのですが、中小企業の場合、「配置転換」をして加害者と被害者の引き離しができない、つまり、規模が小さいために、完全にストレスから遠ざけるような対応を人事的に取りにくいことから、せっかく一度回復しても、再び同じ状況になってしまうリスクがあるわけです。

「老害」化の予防が会社の成長に直結する

したがって、そうした中小企業経営者、幹部社員の場合は、細かく配慮をしていく必要があります。意思決定のプロセスや指示の系統、直接的に組む人を変えるなど、工夫をしなければ、再発を招く確率が高くなってしまいます。

加藤俊徳『老害脳』(ディスカヴァー携書)
加藤俊徳『老害脳』(ディスカヴァー携書)

お断りしておくと、大企業であれば「老害」が起こりにくいというわけでは決してありません。ただ、大企業では比較的メンタルヘルスの維持に対して予算も人材も確保しています。

また過去に同様のケースを経験しているため、ある意味過重労働やパワハラなどと同様、「老害」の加害(と認識しているかどうかは別ですが)に対してもシステム的に、組織的に対処できる余裕とノウハウがあることが多いと考えられます。

一方で中小企業では、こうした問題が発生した場合も、余裕がないため、片手間で対処しなければならなくなります。

中小企業こそ、過重労働や各種のハラスメントを減らし、経営者や幹部の「老害」化を防ぐことが、実は成長に直結していると言えるでしょう。シンプルに考えれば、少人数、小規模だからこそ、みんなが楽しくまとまって働ける企業は魅力的だということでもあります。

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