料理研究家・荻野恭子さんの母、阿部ハルさんは、ボケたくないという一心で、食卓に座って毎日料理をつくり、元気に食べて、103歳の天寿をまっとうした。特に好んで食べたものは、あの長寿の著名人にも共通するという――。
※本稿は、荻野恭子『103歳の食卓 母とつくり上げた卓上クッキング』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
好物はステーキと赤ワイン
母は肉が好きでした。医学者の日野原重明先生や作家の瀬戸内寂聴さんの肉好きは有名ですが、それに負けずとも劣らずの肉好き。「塊肉じゃないと肉を食べた気がしない!」とまで言っていたほど。
その上、赤ワインも大好きだったのでステーキと赤ワイン、という夕食も少なくありませんでした。100歳の誕生日はフレンチレストランでお祝いをしましたが、ミディアムのステーキを残さずにいただき、赤ワインを楽しんでいました。グラスに少し残っていたワインも、気がつけばデザートの後には飲み干していたのも母らしい思い出です。
高齢になると食べる全体量が減ることもあり、タンパク質が不足しがちです。肉にはタンパク質はもちろん、元気の素になるアミノ酸が多く含まれていますし、コレステロールも豊富です。悪者にされがちなコレステロールですが、動物には欠かすことのできない脂質の一種で、血管を強くしたり、物事への関心を高めるような精神的効果も期待できるそうですから、肉は積極的に食べたい食材ですね。
母は食べることが好きだったこともあり、毎回の食事をとても楽しんでいました。たまの外食は楽しみも増していたようです。感謝して楽しみながら食べる料理は血となり肉となり、健康寿命を長く保ってくれていたのだと思います。