「病気になってから治す」が通用しない怖い理由
「こんなに体を壊す前に、なんとかならなかったのだろうか」
かつて救急医療の現場で働いていた私は、心臓の血管が詰まったり、脳出血で倒れたりした人が救急車で運ばれてくるたび、無念さをかみしめていました。このような患者さんのほとんどは中高年です。もっと若いころから健康に注意した生活を送り、たとえ高血圧や糖尿病などの生活習慣病になったとしてもきちんと治療を続けていれば、救急車で運ばれてくるような事態は避けられたはずなのです。
とはいえ、これは理想論かもしれません。現実には毎日仕事が忙しくて病院に行く時間はとれないし、なにも症状がないのに生活習慣病の改善に取り組むのは億劫なものです。やせるべきなのはわかっていても、ストレス解消のため暴飲暴食してしまうときもあるでしょう。ですが、やはり長年の生活習慣はその後の人生に大きな影響を与えますから、軽んじるのは危険です。
「私の祖母はお酒が大好きでしたが、100歳まで長生きしましたよ。だから過度な飲酒は体に悪くない」
こんなことを言う方もいます。もちろん、不摂生を続けた割には病気にならず、天寿をまっとうする人もいるでしょう。しかしそれはたまたま運がよかっただけの話です。私たち医師は、過度な飲酒を続ければどうなるか、高血圧を放置し続けていたらどうなるか、過度な肥満の状態が何十年も続けばどうなるかを知っています。生活習慣病は風邪とは違い、一度かかると完全に治ることはありません。どんな大金を積んでも動脈硬化が進んだ血管を元通りにはできないし、脳梗塞や心筋梗塞になり脳や心臓の一部が壊死したら、その部分が元通りになることもない。いまは医療レベルが進歩し、心筋梗塞や脳梗塞でも命が助かることが多くなりました。しかし命が助かったとしても、大事な臓器にダメージを負ったあとは不自由な生活を送ることになります。
そうなる前に、すべての人に知ってほしいのが「予防医学」です。予防医学は、統計学に基づいた論文をベースにした「確率論」です。健康リスクのある生活習慣を見直せば、致命的な病気になる確率を下げられるのです。
残念ながら、人間は年齢を重ねれば重ねるほど病気になる確率が上がりますし、気を付けるべき病気の数も増えていきます。ですが、いつからでも病気の予防を始めることができます。これから健康寿命を延ばすための生活習慣を年代別に紹介していきます。
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