花粉症の季節にどんなことに気を付ければいいのか。東北医科薬科大学教授で法医学者の高木徹也さんは「骨が弱くなっている高齢者は、くしゃみの止め方を間違えると人体に余計な負荷がかかって骨折や失神を招くおそれがある。これがもし運転中だと、死に直結してしまう」という――。

※本稿は、高木徹也『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

高齢者、バイアグラ服用で目立つ「腹上死」

「腹上死」という言葉をご存じでしょうか。これは性交渉中に死亡することの俗語ですが、法医学の分野を世に広めた功労者でもある、大先輩の上野正彦先生も研究していたテーマです。

ベッドに寝ている男女の足元
写真=iStock.com/Sergii Gnatiuk
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腹上死は突然死全体の0.6~1.7%を占めるという報告もあるようですが、日本国内の割合は正確には把握されていません。一部の論文では、腹上死の75%が不倫関係にあったと報告されていますが、これまでの私の解剖経験では、高齢者による非常に若いお相手との性交渉時、そして、近年認可された勃起不全治療薬「バイアグラ」の服用時が目立つ印象があります。

腹上死が「腹の上で死ぬ」ことを指すため、男性が「正常位」での性交渉時に死ぬことだと思っている方も多いようですが、正常位以外でも、また、男性でなく女性が死亡する場合も「腹上死」と表現します。

さらに、今回は高齢者に焦点を当てて解説しますが、若年者でも発生する可能性があることを理解していただきたいと思います。