「良質な8時間睡眠」がとても重要

また、ノンレム睡眠で深く眠ることで、βアミロイドの排出が促進されたり、記憶の定着が促されるとされています。最近の研究では、自己申告による睡眠時間の短さはβアミロイド値の高さと関連することが示されています。

さらに、レム睡眠中のOSAが重症であるほど、言語記憶が阻害される結果も出ています。睡眠時間が短くなると、睡眠の後半に起こりやすいレム睡眠が短くなります。質の高いレム睡眠を取ることで言語記憶が良くなることを裏づけています。

このように、無呼吸のない良質な8時間睡眠を取ることは、「老害脳」予防には重要な生活習慣になるのです。

また、私は、メラトニンという物質が「老害脳」予防の一役を担うと考えています。

メラトニンという物質には、抗老化作用があるほか、抗炎症作用、鉄キレート作用、抗酸化作用、アンジオテンシンII拮抗作用、時計遺伝子制御作用などがあると知られており、私もときどき、海外旅行中の時差ボケを改善するために愛用していますが、くずれた睡眠リズムを整え、8時間睡眠により近づけてくれます。

メラトニンの化学式と眠っている女性
写真=iStock.com/Blueastro
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中年期の人が、日々忙しく働きながらも脳を若々しく保ち、自身の「老害脳」化を防いでいくには、質の高い睡眠や休養は必要不可欠なのです。

働く人の健康にも関わってきますし、組織内における「老害脳」のまん延を防ぐためにも、これらのことは、組織の人事部門や経営者なども十分に理解しておく必要があります。

小さな会社こそ「老害」と向き合うべき

もしこの本をお読みの方が中小企業の経営者や幹部だった場合、社内において「老害」を防ぐことのメリット、あるいは放置しておくことの危険性は、大企業よりも大きいと認識していたほうがよいでしょう。

同じ「老害」加害者から、同じ状況で繰り返し継続して被害を受けている人は、格段にうつを発症しやすくなります。

産業医の一人として強調しておくのですが、この問題、実は全国のあらゆる職場で起きています。高ストレスを原因とした労働者の自殺は、警察庁の資料「令和5年中における自殺の状況」(2024年3月)によると、年間約6千人程もいるとも言われています。