40~50代の日本人の約4割が睡眠不足
厚生労働省は、「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」(2024年2月)の中で、「睡眠は、こども、成人、高齢者のいずれの年代においても健康増進・維持に不可欠な休養活動である。睡眠不足は、日中の眠気や疲労に加え、頭痛等の心身愁訴の増加、情動不安定、注意力や判断力の低下に関連する作業効率の低下・学業成績の低下等、多岐にわたる影響を及ぼし、事故等の重大な結果を招く場合もある」と指摘しています。
さらに厚生労働省の「令和元年の国民健康・栄養調査結果の概要」(2019年5月)によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者の割合は、男性37.5%、女性40.6%であり、性・年齢階級別にみると、男性の30~50歳代、女性の40~50歳代では4割以上を占めており、先ほどの「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」ではこれを取り上げ、「国民一人ひとりの十分な睡眠の確保は重要な健康課題となっている」と述べています。
すなわち、日本の40~50代の約4割が睡眠不足であり、それが「老害脳」や「認知症脳」の積極的な進行に影響を与えていると考えられます。
睡眠時間を削ったことは最大級の失敗だった
このガイドラインでは、現状を少しでも改善させるべく「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」と目標値を設定しています。しかし、この6時間以上は、脳と体の健康にとって、デッドラインであって、目標睡眠時間ではないのです。
国際的な睡眠時間の目標値は、7時間半から8時間台です。平均睡眠時間が6時間を切ると、生活習慣病など、健康が明らかに脅かされることが医学的にはっきりしています。
かつて、私も「体が持てば、睡眠時間を減らしてもよい」という認識でいました。しかし、これは我が人生の大きな誤りで、最大級の失敗だと今は自覚しています。
60歳になり、1カ月間の平均睡眠時間を2時間以上のばして、現在は日々8時間以上の睡眠時間を保っています。
20代から40年間、苦闘してきた午後の眠気は、平均睡眠時間が7時間を超えても解消されませんでしたが、平均睡眠時間が8時間を超えると全く眠気の症状が消えたのです。人生で脳の調子が一番良いときが、60歳にやってくるとは夢にも思いませんでした。
明らかに50代より60歳になってからのほうが、脳の働きがよくなり、生きている実感が強いのです。「睡眠時間は4時間で大丈夫」という誤った思考の方は絶対に改めたほうがよいでしょう。