スマホに代わる次世代デバイスはどんなものになるのか。Windows95などの開発に携わった元マイクロソフトエンジニアの中島聡さんは「メガネ型か、指輪型かといった形の予想には意味がない。重要なのは、その背後にある『知能』がどれほど進化しているかだ」という――。
※本稿は、中島聡『2034 未来予測 AI(きみ)のいる明日』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
【小説】「シースルー」
(*以下は同書掲載の小説を要約したものです)
営業マンの高塚は、人の顔と名前が覚えられないという致命的な弱点を抱えていた。そんな彼が後輩から譲り受けたのは、一見すると普通の黒縁メガネにしか見えない最新のスマートグラスだった。
このデバイスには、カメラと骨伝導スピーカー、そして高性能AIアシスタントの「SACHI(サチ)」が搭載されている。 相手を見て「まばたき」をするだけで、視界には相手の名前や所属、過去の会話ログが半透明のウィンドウで浮かび上がる。さらにSACHIは、相手の些細な外見の変化から趣味を推測したり、ネット上の最新情報を検索したりして、最適な会話の切り出し方を耳元で囁いてくれるのだ。
高塚は、この「魔法のメガネ」を武器に、苦手としていた高田部長との商談に挑む。SACHIの鋭い観察眼と過去データの照合により、高田との「共通の母校」という接点や、その母校が野球の決勝戦を控えている事実を瞬時に把握。これらを絶妙なタイミングで会話に盛り込むことで、ビジネス上の付き合いを超えた「母校の先輩・後輩」という親密な間柄として信頼を勝ち取ることに成功する。
半年後、高塚は月額8000円の「プロプラン」を契約するほどこのデバイスに心酔していた。もはやSACHIは道具ではなく、「自分自身の脳の一部」を拡張したパートナーとなっていた。
しかし、24時間データの裏付けを提示し続けるAIのサポートは、時に情緒を欠いた残酷な側面も持ち合わせる。相手が「とっておきの品」として振る舞ってくれたワインに対しても、AIは即座に「ネットストアで3980円。セール中です」と「冷徹な数字」を突きつけてくるため、相手の純粋な厚意を素直に受け取れなくなる葛藤が生まれるのだ。
終盤、仕事に没頭するあまり結婚記念日を忘れてしまった際も、SACHIが先回りしてギフトを手配し窮地を脱する。すべてを見抜いている妻に「来年はちゃんと自分の頭で覚えておいてね」と釘を刺されながら、高塚は「何でも見抜いてしまう二人の女性(妻とAI)」に支えられた新しい日常を歩み始める。
営業マンの高塚は、人の顔と名前が覚えられないという致命的な弱点を抱えていた。そんな彼が後輩から譲り受けたのは、一見すると普通の黒縁メガネにしか見えない最新のスマートグラスだった。
このデバイスには、カメラと骨伝導スピーカー、そして高性能AIアシスタントの「SACHI(サチ)」が搭載されている。 相手を見て「まばたき」をするだけで、視界には相手の名前や所属、過去の会話ログが半透明のウィンドウで浮かび上がる。さらにSACHIは、相手の些細な外見の変化から趣味を推測したり、ネット上の最新情報を検索したりして、最適な会話の切り出し方を耳元で囁いてくれるのだ。
高塚は、この「魔法のメガネ」を武器に、苦手としていた高田部長との商談に挑む。SACHIの鋭い観察眼と過去データの照合により、高田との「共通の母校」という接点や、その母校が野球の決勝戦を控えている事実を瞬時に把握。これらを絶妙なタイミングで会話に盛り込むことで、ビジネス上の付き合いを超えた「母校の先輩・後輩」という親密な間柄として信頼を勝ち取ることに成功する。
半年後、高塚は月額8000円の「プロプラン」を契約するほどこのデバイスに心酔していた。もはやSACHIは道具ではなく、「自分自身の脳の一部」を拡張したパートナーとなっていた。
しかし、24時間データの裏付けを提示し続けるAIのサポートは、時に情緒を欠いた残酷な側面も持ち合わせる。相手が「とっておきの品」として振る舞ってくれたワインに対しても、AIは即座に「ネットストアで3980円。セール中です」と「冷徹な数字」を突きつけてくるため、相手の純粋な厚意を素直に受け取れなくなる葛藤が生まれるのだ。
終盤、仕事に没頭するあまり結婚記念日を忘れてしまった際も、SACHIが先回りしてギフトを手配し窮地を脱する。すべてを見抜いている妻に「来年はちゃんと自分の頭で覚えておいてね」と釘を刺されながら、高塚は「何でも見抜いてしまう二人の女性(妻とAI)」に支えられた新しい日常を歩み始める。

