次世代デバイスの使用量は月額3000円ほどか

小説の中で、SACHIの利用料は月額3000円と設定しました。なぜこうしたAIアシスタントサービスは買い切りではなく、サブスクリプション型なのか。それは、AIの維持には膨大な「ランニングコスト」がかかり続けるからです。

リアルタイムで映像を解析し、膨大な過去データと照らし合わせ、自然な音声で回答を生成する。その裏側では、巨大なGPU(画像処理演算装置)を回し続けなければなりません。

サーバーの維持費、データの通信費、そして知能をアップデートし続ける開発費。これらを賄うには、継続的な課金モデルが不可欠です。月額3000円という価格は、現在のChatGPT Plus(有料プラン)を参考にしています。ユーザーの加入率・継続率と、サービス提供側の運用コストを天秤にかけると、そのあたりが妥当なラインでしょう。

一度使うと「24時間AIアシスタント」からは離れられない

こうしたAIアシスタントサービスのビジネスモデルには、もう1つ重要な特徴があります。それは、ユーザーに対する圧倒的な「グリップ力」です。つまり、一度サービスを使ったユーザーをつかんで離さない力。

2034書影
中島聡『2034 未来予測 AI(きみ)のいる明日』(徳間書店)

たとえば、長年使い続けている名刺管理アプリに不満を抱えながら、そのまま使う人が多くいます。これは蓄積された膨大なデータを移行するのが面倒だから。あるいは、携帯電話番号やメールアドレスを変えるとき、変更を伝えるのが面倒で、キャリア変更を断念した人も多いはずです。

24時間あなたに寄り添うAIアシスタントは、名刺管理アプリや電話番号、アドレス以上のグリップ力を持ちます。あなたがこれまでの仕事やプライベートで出会った数え切れない人の顔、交わした会話、その相手の家族の誕生日までをすべて記憶しているパートナーを、そう簡単に解約できるでしょうか。

AIは汎用的なツールではなく、あなたに密着して学習し続けることで、世界で唯一の「あなたのコンテクスト(文脈)を理解する存在」へと進化していきます。使い続けるほどに精度が上がり、代替不可能になっていく。これを乗り換える際の心理的・機能的障壁は、恐ろしいほど高くなります。

これは「気の利く秘書をリストラする」「長年連れ添ったパートナーと離婚する」レベルの話ではありません。たとえるなら、「長年かけて拡張してきた、自分自身の脳の一部を切り離す」ようなものです。

一度AIに記憶を預け、その便利さを知ってしまった私たちは、もはやAIなしの“裸の脳”には戻れなくなる。これこそが、今後のAIビジネスが持つ究極の収益基盤となるのです。

後編へ続く)

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