「兼業・副業」容認は14.7%だが、実際は
兼業や副業が、注目されています。政府も働き方改革の一環として、サラリーマンへの普及を推進していく方針です。明確な定義はありませんが、兼業とは複数の会社や組織に所属する働き方、副業とは会社からの賃金のほかに副収入を得ること、といった意味になるでしょうか。
中小企業庁が実施した「平成26年度兼業・副業に係る取り組み実態調査事業」によると、従業員の兼業や副業について、(1)推進している:0%、(2)推進していないが容認している:14.7%、(3)認めていない:85.3%、という企業割合になっています。
最近は、サイボウズやロート製薬、メルカリなどの導入事例がクローズアップされていますが、現実には消極的な企業が大多数という結果です。
「視野が広がる」「社員の採用・定着に有利」といった企業側のメリットを訴える声はあるものの、「疲れから、本業に支障を来すのでは」「転職されるリスクが高まるのでは」といった不安もぬぐえません。それなら、「あえて推奨する必要はない」というのが、経営者や人事担当者の本音ではないでしょうか。
しかしながら、実際には兼業や副業に対して、企業側が強く反対しているとは思えません。調査アンケートで、「推進していますか?」と聞かれればNOという感じではないでしょうか。
というのも、パートタイマーやアルバイトにまで禁止している会社は少ない。学生がバイト先をかけ持つといったことは、日常的です。「それは、パートやアルバイトの仕事内容だから」と思われるかもしれませんが、経営者が複数企業の役員に名を連ねることも一般的です。上場企業では社外取締役を採用する動きが強まっていますが、そのほとんどは現役経営者や元経営者、弁護士、会計士、大学教授などの兼業です。ソフトバンクの社外取締役には、ユニクロの柳井社長や日本電産の永守社長が加わっていますが、この方々が一般のサラリーマンより忙しくない、とは誰も思わないでしょう。
すなわち、兼業・副業が認められてこなかったのは、いわゆる“正社員”だけなのです。
また、正社員についても、ネット社会では副業を正確に把握するのは困難です。今流行りのユーチューバ―やネットオークションでの商品売買、ブログにアフィリエイト広告を掲載すれば、簡単に小遣い稼ぎができてしまいます。古くは、週末に家業の商店や農家の手伝いなどで、副収入を得ることもあったでしょう。要するに、これまでも『建前禁止・実質黙認』という状態だったのです。