政府・企業OK「副業」の落とし穴
社員の兼業・副業を積極的に認めていこうという動きが政府や一部の企業で始まっている。
中小企業庁の調査(「兼業・副業に係る取組み実態調査、2014年」によれば兼業・副業を認めていない企業は85.3%と圧倒的多数を占める。政府が兼業・副業の容認の旗を振れば、以前のように会社に内緒にすることなく、おおっぴらに副業することが可能になる。兼業・副業が認められると本業以外の収入アップにつながり、家計の助けにもなる。
ただし、政府が副業を容認する狙いは社員の思いとは少し異なる。
安倍首相が議長を務める第2回働き方改革実現会議(10月24日)では、兼業・副業の推進が「社員のキャリアの複線化、能力・スキルを有する企業人材の活躍の場の拡大や大企業人材の中小企業・地域企業での就業促進」が狙いであることが明らかにされている。
また、経済産業省は「イノベーションの促進、人材確保、人材育成、可処分所得の増加、創業の促進、労働市場の流動化につながる」点を強調し、安倍首相も「兼業・副業はオープンイノベーションや起業の手段としても有効であります」(議事録)と述べている。
要するに兼業・副業を推進すれば、イノベーションや可処分所得の増加、創業の促進などが経済成長に寄与し、アベノミクスを後押しするものと期待しているのだ。
多くの企業では就業規則に「許可なく他社の役員・従業員になることを禁じる」といった規定を設けている。政府としては今後、企業が就業規則を見直すときに必要な仕組みなどを盛り込んだガイドライン(指針)をつくることにしている。厚生労働省も現在の兼業・副業を禁止している「モデル就業規則」を容認する様式に改めることを検討していると報道されている。
しかし、実際に兼業・副業する人にとっては、単にガイドラインやモデル就業規則の見直しだけではすまないリスクを抱えることになる。