最大の狙いは、非正社員の賃金の底上げだが……
安倍政権は正社員と非正社員の格差を是正するための「同一労働同一賃金」に向けた法令改正の検討を政府部内で進めている。だが、進め方しだいによっては格差の是正につながらない懸念も生まれている。
フルタイム労働者の時間当たり所定内賃金を100とした場合、日本のパート労働者は56.6。イギリス71.4、ドイツ79.3、フランス89.1より極端に低く、安倍政権の最大の狙いは、非正社員の賃金の底上げにある。
その手法として安倍政権が白羽の矢を当てたのが同一労働同一賃金原則の導入だ。
同一労働同一賃金とは、職務や仕事の内容が同じである労働者に対し、同じ賃金を支払うべきとする考え方だ。ただし、同じ仕事や職務であっても異業種や企業規模によっても賃金は異なるが、政府は主に「同一企業内の正社員と非正社員(パート・契約・派遣社員)の賃金の違い」をターゲットにしている。
では、どのようなアプローチによって実現を図るのか。
政府は法令改正によって裁判や行政指導を通じて処遇改善に向けて企業の背中を押そうとしている。
現時点で浮上している案は、ヨーロッパのEUの労働指令に倣って非正社員に対する「客観的合理的理由のない不利益な取扱いを禁止する」という差別禁止の条文を現行の労働契約法、パートタイム労働法及び労働者派遣法に入れるというものだ。
ちなみに、日本でも不合理な待遇差を禁じる規定が労働契約法とパートタイム労働法にある。
具体的には、
(1)仕事の内容や責任の程度
(2)配置などの変更の範囲
(3)その他の事情
の3つの考慮要素に照らして裁判官が合理的かどうかを判断するという幅広の解釈が成り立つような建て付けになっている。