欧米諸国では当たり前の考え方だが

同一労働・同一賃金に対する議論が活発になってきました。安倍内閣の方針を受け、厚生労働省も大学教授などを中心メンバーとした「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」を発足させ、年内には実現のための具体的な方策案が出てきそうです。

同一労働・同一賃金とは、「同じ価値の仕事内容であれば、同じ賃金にしなさい」という考え方です。

主要先進国では当然の考え方として認識されていて、欧米ではこの原則に沿うかたちで、職種別賃金や職務給という考え方が定着しています。

日本でも、男女雇用機会均等法に加え、パートタイム労働法改正で(1) 職務内容が正社員と同一、(2) 人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一であれば、正社員との差別的取り扱いが禁止されることになりました。徐々にではあるものの、確実に動き出しているといえるでしょう。

しかし、政府が現在このテーマで解決しようとしているのは、あくまで正社員と非正規社員の待遇格差是正に絞られているように見えます。すでに、働く人の実に40%(女性に限っては50%)が、非正規社員となっています。バブル崩壊後のデフレ経済下において、小売り・飲食業を中心に、非正規社員比率を高めることで、人件費コストを抑制してきたのです。

たとえば、フルタイム社員に対するパートタイマーの時間当たり賃金水準は、ヨーロッパ諸国が70~80%程度であるのに対して、日本では50%台となっています。非正規社員のうちパートタイマーは6割程度を占めていますので、この人たちの待遇を改善すれば、大きなインパクトになるでしょう。

しかし、本来の同一労働・同一賃金を実現しようとするのであれば、正社員と非正規社員の格差是正だけでは不十分です。それ以外にも、この考え方を阻む、日本の長年にわたる雇用習慣が横たわっているからです。