オジサンの給与を下げるしか方法はない
このように、真に「同一労働同一賃金」を実現しようとすれば、非正規社員の待遇改善だけに留まらず、正社員内に存在している問題に手を付けなければなりません。
まずは、非正規社員の待遇改善だけに着手するにしても、賃金水準を正社員に近づけるには、大幅な人件費増を伴います。国際的に比較して利益率の劣る日本企業が、更に利益を削って人件費を増やすことは、事業の存続にもかかわるため困難です。
ところで、今回採り上げた、これまで優遇されてきた人たちの共通項は何でしょう?
「正社員」「中高年社員」「家族持ち」「定年前社員」「全国社員」「出向者」。いずれも、その多くは中高年の男性社員、すなわちオジサンです。
もし政府が、本気で同一労働・同一賃金を実現しようとするのではあれば、「これを実現するためなら、既得権者の賃金は引き下げてもよろしい」という法律をつくるしかないと思います。
しかしながら、冒頭の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」に提出されている資料の中でも、「有利な取り扱いを受けている人の処遇を引き下げて対処することは許されない」旨の記述があります。すなわち、既得権は守りながら改善しましょう、というスタンスです。
国がこのスタンスを変えない限り、「結果は見えた」といえるのではないでしょうか。