日本の雇用習慣に横たわる給料格差
1.中高年社員と若年社員
ある工場で、同じ製造ラインの作業者として25歳と50歳の社員が、働いているとしましょう。しかも、モノを造るのは機械ですので、両者の間に生産性の違いはありません。この会社が年功序列型の給与制度なら、月給がそれぞれ20万円と40万円であっても、不思議ではありません。25歳の若手社員が「同じ仕事しているのに、年齢が違うだけで、給料が2倍も違うのはおかしい」と訴えたら、どうなるでしょうか?
2.家族持ちと独身者
家族手当のように、仕事内容とは関係ない要素によって決定される給与項目は、どうでしょう。結婚しない人が増える世の中、独身者から見れば、明らかな不公平です。仮に、配偶者2万円、子ども1人につき5000円の会社なら、子ども2人の世帯主には合計3万円の家族手当が支給されることになります。年間の平均昇給額が5000~6000円である昨今、いくら独身者が頑張っても、3万円の差を埋めるのは並大抵のことではありません。
3.定年前社員と定年再雇用者
ほとんどの会社では、60歳が定年で、その後に再雇用されると、賃金水準が大幅にダウンします。ところが実際には、59歳と60歳の1年の違いで、急激に能力が低下するわけではありません。今年5月には、横浜の運送会社で再雇用されたトラック運転手が訴えた裁判で、「定年前と同じ立場、同じ仕事であれば、再雇用後であっても、給与水準を引き下げるのは違法」という判決が、東京地裁で出されました。これまでの常識を覆す、驚くべき判決です。
4.全国社員と勤務地限定社員
もう1つ、政府が進めようとしている雇用政策に「非正規社員の正社員化」がありますが、この切り札として「限定正社員」が位置づけられています。勤務地や職種を限定することで、無限定の正社員よりは一定の待遇差を容認する考え方です。
しかし、同じ職務の場合、勤務地や職種が限定されているという理由だけで、極端な賃金差は許容されるのでしょうか。勤務地限定社員の方が、仕事は優秀かもしれません。
5.出向者とプロパー社員
大企業では、多くの子会社・関連会社に、社員を出向させています。通常、子会社・関連会社の賃金水準は、親会社よりも低く、出向者には親会社の賃金制度が適用されるため、同じ仕事内容であっても、出向者とプロパー社員の処遇差は厳然と存在します。少なくとも子会社の業務においては、出向者よりプロパー社員の方が、仕事ができるケースも多いでしょう。これは違法にならないのでしょうか。