米カリフォルニア州のシリコンバレーといえば名だたるハイテク産業が集まり、米経済をリードする地域だが、近年は「カリフォルニア離れ」の傾向が見られるという。ジャーナリストの岩田太郎さんは「米民主党系が強く、『大きな政府による手厚い住民サービス』を志向するカリフォルニアの住居費高騰や規制を嫌い、ハイテク企業が続々と移転し始めている」という――。
「カリフォルニア離れ」が起きている
アメリカ・カリフォルニア州のシリコンバレーといえば、泣く子も黙る「ハイテク産業の聖地」だが、最近は様子が変わっている。多くの人や企業がカリフォルニアを離れ、新たな土地に移転する動きが目立っているのだ。
2022年には10万2442人もの人がカリフォルニアからテキサスに移住している。一方でテキサスからカリフォルニアへ転居したのは4万2279人と、差し引き6万163人の超過となっている。
ちなみに米国勢調査局によればカリフォルニア州の人口は全米1位だ。2020~2022年は3年連続で前年割れの減少が続いたが、州政府の発表では2023年に6万7000人以上増えておよそ3913万人と微増に転じている。しかし、増加は勢いに欠ける。
一方、テキサス州の人口は全米2位の3050万人ではあるものの、約47万3500人増と大きく伸びている。
住居費が高すぎる
なぜ人々はカリフォルニアを脱出しているのか。
最もわかりやすい動機は、住居費の高騰だ。たとえば、テスラ本社の旧所在地であったシリコンバレーのパロアルトでは、2024年6月現在、住宅価格の中間値は前年同月比で21.6%上昇し、330万ドル(約5億2800万円)となっている。
一方、テキサス州の州都オースティンでは前年同月比で5.2%下落して53万7000ドル(約8600万円)と、カリフォルニアと比べて安さが際立っている。
カリフォルニアで持ち家を売却し、テキサスで新規購入しても、かなりのお釣りが来る計算になる。その差額を子供の教育費や海外旅行、老後の蓄えなどに回せるとなると、多くの人の心が動くだろう。