イーロン・マスク氏が移住した理由
「天才経営者」として名高いイーロン・マスク氏は、長い間カリフォルニアに在住していた。彼の手掛ける事業といえばEVやフィンテック、人工知能(AI)など先端テクノロジー分野が中心だが、それらはサンフランシスコ近郊のシリコンバレーで生み出されてきた。だからマスク氏も「スタートアップの聖地」シリコンバレーの近くに住んでいた、というわけだ。
ところがマスク氏は突然シリコンバレーの自宅を引き払い、テキサスに移り住んだ。コロナ禍の2020年12月ごろの出来事だった。
ロックダウン(経済封鎖)や就労制限など、カリフォルニア州の民主党的な政策に不満を募らせた結果と言われている。
州都オースティンは「シリコンヒルズ」
さらに2021年には、自身が経営するテスラの本社をシリコンバレーのパロアルトから、テキサス州の州都オースティンに移すと発表した。オースティンはハイテク産業の集積地で、別名「シリコンヒルズ」とも呼ばれており、近年では医薬品やバイオテクノロジー関連企業の事業拠点として成長を遂げている。
テキサス州は共和党が支配する保守的な土地柄だが、オースティンはリベラルで、しかも規制が緩いビジネスフレンドリーな場所であり、テスラにとって理想的な移転先だった。
それから3年以上が経過したが、テキサスにおけるテスラの存在感は増している。スポーツタイプ多目的車(SUV)「モデルY」や、角ばった「サイバートラック」を生産するギガファクトリー・テキサスは、2023年に従業員数を前年比86%増やし、2万2777人と、オースティン最大の民間雇用主となった。
また、テスラはEVバッテリー製造で使われるリチウム精製工場を、同市から南へ350キロメートルのメキシコ湾沿岸の都市コーパスクリスティ付近に建設中だ。