電気代がべらぼうな値段に跳ね上がる
電力についても規制の緩いテキサス州だが、裁定取引を取り入れた価格決定メカニズムを導入したことで、今年の猛暑のようなピーク時にも市場原理が働き、電気代がべらぼうな値段に跳ね上がるという。
加えて、環境保護の意識が高いリベラルな人たちがカリフォルニアから転入することで、石油やガスの一大産地で保守的な既存テキサス住民との間で政治的な対立が深まっている。
メキシコの国境の町にあるマスク氏のスペースXのロケット発射場では騒音・環境汚染問題が絶えないという。
こうした中、カリフォルニアを逃れてテキサスに本社を構えたオラクルが、「北の隣人」であるテネシー州の法人税減免に釣られて、オースティンを去る計画があると4月に発表している。
また、同じ4月にオースティン最大の民間雇用者であるテスラがEV販売不振を理由に、ギガファクトリーで2700人を解雇すると告知した。
なおマスク氏は、一度テキサス州に移したテスラのエンジニアリング本部を、2023年に再びカリフォルニア州に戻している。
さらに、オースティンに本社を置く世界ナンバーワンの求人サイトのインディードが5月に1000人をレイオフしている。
オンライン旅行通販会社エクスペディアのオースティン支社でも100人を解雇、本社がオースティンにある出会い系アプリのバンブルも350人を一時帰休にしている。
市場原理を重んじて規制撤廃を行えば、すべてうまくいくわけではない。
もはや田舎の保守州ではない
このように、カリフォルニアから多くの「テック移民」を引き寄せるテキサスだが、そこには光と影が併存し、新参者と古参住民との対立も激しい。
保守州であるため、11月の大統領選挙ではトランプ氏が勝利する確率が高いだろうが、シリコンバレーからやってきた有権者が投票結果に微妙な影響を与える可能性もある。
テキサスはもはや、昔のような田舎の保守州ではない。
米国の未来を読み解く上でも、変化し続ける同州における「カリフォルニア的なもの」と「テキサス的なもの」のせめぎあいから目が離せなくなっている。