いちばん多いのは皆婚時代の75歳以上

警察庁が2024年1月~3月を対象期間として、いわゆる孤独死・孤立死(自宅で死亡した一人暮らしの数)の全国的な集計を実施しました。これまで孤独死・孤立死に関するデータ収集は、東京や大阪など一部の自治体単位では実施されていましたが、全国的な集計としてはこれが初となります。

それによると、自宅で亡くなった一人暮らしの総数は2万1716人で、単純に年換算すると、8万6864人が孤独死・孤立死する推計になります。これは、2023年の人口動態概数における死亡原因順位にあてはめると、悪性新生物(腫瘍)、心疾患、老衰、脳血管疾患に続く5番目に多い数字となります。

「結婚しないでいると孤独死するぞ」などとよく言われることがあります。未婚で一人暮らしであれば、万が一の事態に際して、発見してくれる人もいないわけですから、確かにそのリスクは有配偶者よりも高まると思うかもしれません。

しかし、孤独死している人のうち、年齢別でもっとも数が多いのは75歳以上であり、2024年時点でその年齢とはほぼ結婚していた皆婚時代の世代であり、決して「結婚したから孤独死しない」とは言えません。

マグカップを手に一人でソファに座っている男性
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「一人になった時にどう生きるか」を考えるのが重要

過去記事〈日本は人口の5割が独身者の「超ソロ国家」になる…これから「ひとり暮らしの高齢者」が激増していく理由〉でも書いたように、これから日本は、未婚化だけではなく、皆婚時代に結婚した夫婦のいずれかが死亡することによる独身化と一人暮らし化が加速していきます。結婚しても、誰もがいずれは一人に戻るという可能性があり、決して既婚者にとっても他人事ではないのです。

とはいえ、ことさら孤独死や孤立死を悲惨なものとしてとらえる必要もありません。残念ながら、誰にも死は訪れます。たとえ一人暮らしの中の死であっても、何カ月も発見されずに放置されたりしない仕組みや体制のほうこそ必要になります。

むしろ、一人で死んでしまうことを怖れるよりも、いずれ確実にやってくる「一人で生きる状態になった時にどう生きるか」を事前に考えていくことのほうが重要ではないでしょうか。

ところで、「一人で生きる」というと、何かとその孤独感を問題視する界隈があります。そもそも、2021年の政府の孤独担当大臣設置も、そうした問題意識から英国の事例を模したものですが、当初は、「孤独は早期死亡リスクが50%上昇する」「孤独のリスクは一日タバコ15本吸うことやアルコール依存症であることに匹敵する」「孤独は肥満の2倍健康に悪い」などという研究結果を持ち出して、さも「孤独は悪」のような言説が飛びかっていたものです。