イーロン・マスク氏が米政府効率化部門の特別職員として、大ナタを振るっている。19歳の若手エンジニアの起用やAI活用の推進など、大胆な施策を打つマスク氏。だが、政府機関への強引な介入と無理な支出削減策は、Twitter買収時の混乱を想起させる。急進的な改革に、アメリカで懸念の声が上がっている――。

UFCの試合を観戦したドナルド・トランプ氏とイーロン・マスク氏、ケネディ・ジュニア氏ら(写真=Office of Speaker Mike Johnson/PD/Wikimedia Commons)
政府内でやりたい放題のイーロン・マスク
イーロン・マスク氏は政府効率化部門(DOGE)の特別政府職員として、連邦支出を2兆ドル(約300兆円)削減する野心的なプロジェクトに当たっている。削減幅は日本の国家予算の約2.7倍に当たる。
米CNNは、世界長者番付1位のマスク氏が政府機関に強引な介入を相次いで行っており、混乱が生じていると報じる。マスク氏は「特別政府職員」として政府に関わっているものの、その権限を大きく逸脱する行動が目立つ。本来、予算管理は議会の権限であり、いわばグレーゾーンの行為だ。
マスク氏率いるDOGEチームは、政界経験のないシリコンバレーの技術者や若手エンジニアを起用。チームはすでに年間5兆ドル(約760兆円)以上を管理する財務省の支払いシステムへのアクセス権を獲得したほか、開発途上国支援の要であるアメリカ国際開発庁(USAID)のほぼ全職員を一時帰休にするなど大ナタを振るっている。
さらに、連邦職員への一括退職プランの持ちかけや、キャリア公務員の締め出しなど、議会が定めた法や制度を無視するかのような行動を続けている。
名目上、マスク氏はホワイトハウスで無給の職員として130日以内の任期を務めている。アメリカのドナルド・トランプ大統領は「イーロンは我々の承認なしには何も行動できない」と述べ、自身の統制が及んでいる点を強調する。だが、実際にはガバナンスが効いていない状況だ。