「滅茶苦茶でべらぼうな人」トランプ第47代大統領の素顔とは
「カナダを51番目の州にしよう」「パナマ運河はアメリカ運河」「(デンマーク領)グリーンランドを買収しよう」「メキシコ湾の名前をアメリカ湾に変えよう」
34の有罪判決を受けたにもかかわらず、再び大統領に返り咲くという前代未聞のトランプ大統領は、2度目の就任前から荒唐無稽な発言で世界を振り回してきた。常識では計り知れないその思考回路を生み出すこの人はいったいどのような内面を持つのか――。
現在公開中の映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、まだ20代の“ナイーブでお坊ちゃん”なトランプがモンスターへ変貌していく様子を克明に描いたとしてアメリカ本国だけでなく国内でも話題を呼んでいる。
本作は、政治ジャーナリストとして20年間トランプ大統領を追ってきたガブリエル・シャーマンさんが2017年から脚本を書き始め、2024年10月の本国公開まで7年もの時間をかけて、やっと公開することができた作品だ。
1月の日本公開を前にシャーマンさんは筆者の取材に「20代のトランプは、まだ“今のトランプ”ではなかったが、現在は3つのルールに基づいて行動している」と語り、日本の石破茂首相を含む現政権による、トランプ対策のお粗末さに警鐘を鳴らした。
20代のトランプは、まだトランプではなかった
2016年の1回目の大統領選のとき、トランプの側近から「トランプは政治アドバイザーよりも、ロイ・コーンに教えられた“3つのルール”に従って動いている」と聞いたというシャーマンさんは、膨大な数の取材を経て、悪徳弁護士で有名だったロイ・コーンとの出会いがいまのトランプをつくったと確信した。
シャーマンさんによると、トランプの父の不動産会社が破産の瀬戸際に追い込まれた1970年代後半にトランプはコーンに出会い、前述した“勝つための3つのルール”を刷り込まれていったそうだ。
「ルール2:何も認めず、すべてを否定する」
「ルール3:何が起ころうとも勝利を主張し、決して敗北を認めない」
ニクソン大統領など大物顧客を抱え、勝つためなら不法行為も厭わないコーンのこの教えは、トランプをNYの不動産王へと変えていき、次第に“師匠”コーンをも凌駕するモンスターへ変貌していった。
シャーマンさんは、「トランプに哲学などありません。何をしようとも勝つことだけが正義。一方で、この3つのルールを知ればトランプを深く理解できる」と説明する。