エアコンの涼風が心地よい季節だが、8割超の人が「電気代が負担」と感じ、4割超が「冷房利用を我慢する」と答えている。そんな中、熱中症で倒れる人も多い。第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣さんは「ウクライナ戦争以降、日本国内における中産階級の貧困化とインフレが重なった『スクリューフレーション』が深刻化している」という。国民負担率が約5割に達し、物価の上昇が止まらない日本はどうすればいいのか。ジャーナリストの浅井秀樹さんがリポートする――。
汚れたエアコンを分解して修理中
写真=iStock.com/kuarmungadd
※写真はイメージです

「適切にエアコンを使って」呼びかけに応じられず倒れる人々

熱中症で救急搬送される人が増える季節となった。消防庁によると、熱中症での救急搬送は最も多いのが年齢層別で高齢者、発生場所別で住居という。エアコンなどの冷房器具をためらわず使い、こまめに水分補給するなど、予防対策を呼びかけている。

福岡市は「熱中症情報」のサイトで住民に注意を喚起し、「冷房を控え過ぎたケース」として、市内の熱中症発生事例を紹介している。80代の男性は3日ほど前から食欲がなく、体のだるさを感じて室内にいたが、冷房器具の使用を控えていたところ、症状が悪化し、動けなくなったという。

熊本県益城町も熱中症予防を呼びかけるサイトで、過去の事例を紹介している。エアコンの使用を控えて生活していた高齢者が、のどの渇きや暑さを感じにくくなり、食欲不振となって体調不良で救急搬送されたという。重症化した熱中症とわかった。

熱中症が65歳以上の高齢者に多いのは、①老化で発汗量が減って体熱を放出しにくくなる、②暑さを自覚しにくくなる、③口渇中枢の機能低下で脱水症状でも、のどの渇きを感じにくくなる、などとされる。こうした加齢による体の変化のほかにも、年金生活者が多く、節約志向からエアコンなど冷房器具の使用を我慢するケースが少なくないとみられる。

なぜ、暑いのに我慢するのか。

パナソニックが今年5月に実施したアンケート調査によると、今年の冷房利用を我慢しようと思うという回答が43%もあったという。電気代が家計に負担と感じている人が81%もいたとも。エアコンを所有する20~60代の男女555人にインターネットで調査した。年金生活者の世代になると、生活費に余裕のない人が少なくないため、電気代の負担感はこの調査結果よりも、さらに大きくなるのではないだろうか。

一方、熱中症は人命にかかわる。政府広報サイトは「熱中症は命にかかわる病態で、近年、熱中症による救急搬送人員は毎年数万人を超え、死亡者数は5年移動平均で1000人を超える高い水準で推移しています」と注意を呼びかけている。