パナソニック創業者の松下幸之助は、神仏に熱心に祈っていたことが知られている。『成功するビジネスパーソンは、なぜ忙しくても神社に行くのか?』(PHP研究所)の著者である八木龍平さんは「願いごとよりも、自身の『あり方』『あるべき姿』を神様に誓い続けるのが、一流のビジネスパーソンに共通の『祈り』だ」という――。

※本稿は、八木龍平『成功するビジネスパーソンは、なぜ忙しくても神社に行くのか?』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

松下幸之助氏(パナソニックグループ創業者)と稲盛和夫氏(京セラ・KDDI創業者)
松下幸之助氏(パナソニックグループ創業者)と稲盛和夫氏(京セラ・KDDI創業者)(写真左=時事画報社『フォト(1961年8月15日号)』/PD-Japan-organization/Wikimedia Commons、右=Science History Institute/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

パナソニックには「神社管理担当」の正社員がいる

大手総合電機メーカー「パナソニックホールディングス」には、会社の中に神社があります。週刊誌『AERA』の記事(2018年1月15日号)に、頭を丸めた僧侶姿の田中観士さんの取材記事が掲載されていました。

名刺には、「パナソニック本社グループ人事・総務センター 祭祀担当」(当時)の肩書が。本社をはじめ、関西エリアの事業所に設置されている計24カ所の「社内社」の祭祀一切を仏式で任されているということです。

パナソニックといえば、創業者の松下幸之助氏は石清水八幡宮(京都府八幡市)、野田恵美須神社(大阪市福島区)の総代をお務めになられました。総代は信者の代表。野田恵美須神社がある地域はパナソニック創業の地で、松下氏自身、最後まで本籍を置き続けたゆかりの地です。

総代を務めただけだと、「信仰心の篤い方」という印象ですが、祭祀担当の社員が代々いるとまでなると、なぜそこまでと不思議に思われるでしょう。先の田中さんは5代目で、本社別館の「司祭室」に勤務し、毎朝出社とともに香をたき、袈裟に着替えるそうです。

なぜ松下幸之助氏が会社内に神社を建てたのか

同社はかなり戦略的に神様(龍神)を活用しており、守護神は本社の白龍大明神を中心に、黒・青・赤・黄と5色の龍神と下天龍王、善女龍王が祭られています。

本社:白龍大明神
旧松下電工グループ:黒龍大明神
旧松下電池工業:青龍大明神
自転車事業部:赤龍大明神
旧松下電子工業・旧松下産業機器:黄龍大明神
音響映像関係の事業場:下天龍王
西宮の松下幸之助邸宅(光雲荘):善女龍王
開発研究所:天照大神

新たな事業所の開設とともに龍神の社が守護神として建立され、一時期は130カ所以上にもなりました。現在は全国の事業所に約100カ所の社があり、全ての社で幹部・管理職が同席して毎月の月例祭がおこなわれています。

松下幸之助氏が会社内に神社を多く建てた狙いは、結局のところひとつと推測しています。それは、「運を強くする」ということです。