世界のEV化に急ブレーキがかかっている。モータージャーナリストの岡崎五朗さんは「EV一本化は無理だと理解されはじめている。トヨタが掲げるマルチパスウェイ戦略の正しさが証明された格好だ」という――。

※本稿は、杉山大志ほか『SDGsエコバブルの終焉』(宝島社)の原文を元に一部を再編集したものです。

豊田章男という「政治と戦える経営者」

世界中の自動車メーカーが政治に翻弄されるなか、日本にとって幸運だったのは、豊田章男という政治と戦える経営者(日本自動車工業会会長も兼任)がいたことだ。

「すべてEVにしろと言う政治家がいるが、それは違う」と、真っ向から権力に立ち向かった。

EV脳のメディアは「EVに出遅れたからハイブリッドにしがみついている」、「エンジン廃止宣言をしたホンダを見習え」とトヨタバッシングを繰り広げた。

典型例が、2021年8月に朝日新聞系のウェブサイト「論座」が掲載した「米国で強まるトヨタ自動車批判」という記事だ。

トヨタがロビー活動によってEVの普及を妨害しているというその筋ではちょっと有名な日本人記者が書いたニューヨークタイムズの記事を引用しながら、気候変動問題に消極的なメーカーというレッテルをトヨタに貼った。

トヨタのマルチパスウェイ戦略は明らかに正しい

しかし、急速なEV一本化は無理だから、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、水素など、あらゆる手段を使いつつ、ベストミックスを探って二酸化炭素を着実に減らしていきましょうというトヨタのマルチパスウェイ戦略は論理的にみて明らかに正しい。

トヨタのロゴ
写真=iStock.com/MoreISO
トヨタのマルチパスウェイ戦略は明らかに正しい(※写真はイメージです)

後述するが、この考えは欧州自動車工業会も同じだし、バイデン政権の方向性とも基本的には合致する。

ニューヨークタイムズと言えば朝日新聞の提携相手。そして論座は朝日新聞の直系メディア。身内の日本人記者が書いた記事を逆輸入し、海外でも批判されているという印象操作を行った自作自演記事と思われても仕方ないだろう。