東京都の小池百合子知事は、「東京都は2030年に新車販売で非ガソリン車を100%にする」と宣言している。この目標は実現可能なのだろうか。モータージャーナリストの岡崎五朗さんは「『EV100%論』を信じる小池氏は『脳内お花畑』と言わざるを得ない」とという――。

※本稿は、杉山大志ほか『SDGsエコバブルの終焉』(宝島社)の原文を元に一部を再編集したものです。

「EV100%は非現実的」が各社の共通認識

いまだEV原理主義に取り憑かれた人たちもいる。その一人が小池百合子東京都知事である。

2023年10月26日から11月5日に開催された東京モーターショー改めジャパンモビリティショーには、自動車メーカーのみならず、スタートアップやエネルギー会社などモビリティに係わる多くの企業が参加し、カーボンニュートラルに向けた様々な取り組みを発表した。

「EV100%は非現実的。だからこそ様々な技術やアイディアを持ち寄り、力を合わせて日本の競争力を高めていこう」というのが各社の共通認識である。

電気自動車の充電
写真=iStock.com/UniqueMotionGraphics
「EV100%は非現実的」が各社の共通認識(※写真はイメージです)

東京都副知事が語った「EV100%論」のお花畑

そんななか、空気をまったく読めていない主張をする人物が現れた。

「地球環境×モビリティの未来。持続可能な社会のために」と題したテーマのトークショーセッションに、小池百合子東京都知事の代理として急遽出席した潮田勉東京都副知事だ。

事前アナウンスでは小池東京都知事が参加する予定だったが直前にキャンセル。

「やっぱり逃げたか」と多くの関係者が呟くなか始まったトークセッションでは、日産の内田誠社長、経済産業省製造産業局局長の伊吹英明氏、富士通の大西俊介氏、東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり氏などが、現実に即した取り組みやアイディアを披露した。

そんな雰囲気を一気にしらけさせたのが潮田副知事だ。

曰く「東京都は環境先進都市として2030年の“非ガソリン化”を目指します」。

世界が方向転換をしつつあるなかでの超お花畑発言に対し、会場からは失笑が起こった。

小池都知事は「EV原理主義」に取り憑かれている(東京都知事の公務後、報道陣の取材に応じる小池百合子氏、2024年6月20日)
写真=共同通信社
小池都知事は「EV原理主義」に取り憑かれている(東京都知事の公務後、報道陣の取材に応じる小池百合子氏、2024年6月20日)