生産台数3億台、人的投資3800億円、変革への投資1.7兆円

2024年5月8日にトヨタの決算が発表された。営業収益(売上高)は45兆953億円。前期よりも21.4%増えた。営業利益は5兆3529億円。前期よりも2兆6279億円、96.4%増えている。利益はほぼ倍増している。

各メディア、ニュースサイトが取り上げる数字はこのふたつだ。しかし、決算の数字の中で注目すべきはこの数字だけではない。

トヨタ自動車の決算発表記者会見でスピーチする佐藤幸治社長(2023年5月10日、東京)
写真=EPA/時事通信フォト
トヨタ自動車の決算発表記者会見でスピーチする佐藤幸治社長(2023年5月10日、東京)

これまでとこれからのトヨタを知ろうと思ったら次の3つの数字に注目するべきだろう。それは決算要旨に書かれている。生産台数3億台、人的投資3800億円、変革への投資1.7兆円。

「2023年9月にグローバル生産累計3億台を達成しました」

トヨタは1938年の創業からこれまでに3億台もの車を作ってきた。これはユーザーからの支持だ。延べ3億人のユーザーがトヨタの車に乗ってきた。誇るべきはこの数字だ。例えば年間に300万台作ったとして、3億台を達成するには100年かかる。それをトヨタは86年で達成した。3億台は感慨無量の数字だろう。

次が人的投資の金額だ。決算説明会の資料にはこうある。

こんな投資は聞いたことがない

「高い業績を活かし、未来への人的投資、成長投資を加速。人への投資:3,800億円(うち、仕入先/販売店 3,000億円)……(中略)自動車産業全体の魅力を高めるための、仕入先/販売店の労務費負担、従業員の環境改善などに対する投資」

これは自社へのお金ではない。仕入れ先、販売店の従業員に対して労働環境を整備するための費用を負担すると言っている。つながりはあるとはいえ、他の会社の従業員のためにお金を使うと言っている。会社の姿勢、心意気とはこういうところに表現されている。ちなみに、大企業がこうした予算を発表したことをわたしは聞いたことがない。

さて、3つめが本稿の主旨に関連する投資内容だ。技術への投資である。

「モビリティカンパニーへの変革に向けた投資:1.7兆円。マルチパスウェイ戦略の具現化(BEV・水素など)。トヨタらしいSoftware Defined Vehicleの基盤づくり(ソフトウェア・AIなど)」

マルチパスウェイの筆頭に挙げられている技術領域がBEVだ。べヴと読む。トヨタは現在、世界中からもてはやされるようになったハイブリッド技術よりもBEVを筆頭に挙げている。

さて、それはどういうことなのだろうか。