日本人はハイブリッド・軽自動車を誇りに思うべき

日本の削減率がダントツに高いのは、他のどの国よりもハイブリッドの普及率が圧倒的に高いことに加え、安くて小さくて軽くて燃費のいい国民車=軽自動車が販売シェアの約40%を占めているからだ。

われわれはこの事実を誇りに思うべきだし、売る側(自動車メーカー)と買う側(ユーザー)が一体となって成し遂げた成功モデルを広く輸出することが世界に対する日本の貢献にもなる。

「EVオンリーでカーボンニュートラル達成はできない」各国が一致

ケリー氏の抵抗を押し切り、日本政府がここまで粘ることができた背景には、意外かもしれないが各国自動車工業会の後押しがあった。

サミット直前の4月4日、日本自動車工業会が一通のリリースを出した。大手メディアにはまったく注目されなかったが、そこには驚くべき内容が書かれていた。

「2050年カーボンニュートラル達成に向け各国自動車工業会と方向性を再確認」という題名で、内容は大きく3つ。

カーボンニュートラル達成には、①EVだけでなく様々なアプローチが必要。②新車に加え使用中の自動車から出るCO2を削減するためにカーボンニュートラル燃料の技術開発が必要。③政府と産業界のパートナーシップをより深め信頼できるインフラと強靱なサプライチェーンを構築することの重要性。

内容もさることながら、私が注目したのは賛同団体として、イタリア、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、日本、EUつまりG7を構成するすべての国と地域の自動車工業会の名前が入っていた点だ。

杉山大志ほか『SDGsエコバブルの終焉』(宝島社)
杉山大志ほか『SDGsエコバブルの終焉』(宝島社)

広島サミットを前に、各国の自動車業界が「EVオンリーでカーボンニュートラル達成はできない」という意見で一致していることを示し、各国政府にプレッシャーをかけることがこのリリースの狙いであり、政治はそれを受け入れた。

こうして広島サミットを機にG7各国は公式にEVオンリー政策から距離を置き、現実的なマルチパスウェイ政策へと舵を切ることになった。

もちろん、そこにはもうひとつの背景として中国に対する警戒もある。

性急なEV推進は、バッテリーやモーターの原材料を牛耳っている中国への依存度を高めることに直結するからだ。

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