小売業、飲食業はどこも赤字になる?
昨年12月20日の働き方改革実現会議で、同一労働同一賃金ガイドライン案が報告されました。
非正規社員の待遇改善を目的として、正社員との不合理な賃金格差を是正するための具体例が示されました。賞与についても、貢献に応じて非正規社員にも支給対象とすべきとした点が、これまでより踏み込んだ内容となっています。
さて、この問題、パート・アルバイト比率の高い小売業や飲食業にとっては、死活問題です。たとえば、流通業最大手であるイオングループの決算データを使って、考えてみましょう。
2016年2月期の有価証券報告書では、以下のようになっています。
●営業収益(≒売上高):8兆1767億円
●人件費(福利厚生費含む):1兆1113億円
●経常利益:1797億円
●従業員数(正社員):13万5058人
●臨時従業員数:26万1356人(1日8時間換算)
この臨時従業員というのは、その多くはパート・アルバイト社員です。そこで、パートタイマーの賃金水準を、どこまで正社員に近づけるのかが問われることになります。
正社員に近づけるといっても、店長並みの仕事をしているパート社員は、ほとんど存在しないでしょう。そこで、新入社員など若手社員の賃金水準と比較してみましょう。小売り部門への配属であれば、店長・幹部候補としての入社であっても、しばらくは店舗での接客・販売業務が中心となるからです。
パート社員の時給は、全国平均では900円前後と思われます。一方、若手正社員であれば、大卒初任給が20万円強として、賞与を含めれば年収300万円程度。時給にして1500円くらい。全国転勤があるため、その分の価値が10%上乗せされていると仮定して、勤務地限定なら1350円。これでも、900円に対しては1.5倍となります。仮に、月間の平均労働時間を160時間として計算すると、
(1350円-900円)×261356人×160時間×12カ月≒2258億円
2258億円の賃金総額アップとなり、グループの経常利益が吹き飛び、赤字になってしまいます。さあ、大変なことになりました。イオングループの例で試算してみましたが、たいていの小売業や飲食業は、同じような事態になることが予想されます。